海南市の郷土史家、平岡繁一さんが「光を当てたい」と語る歴史上の人物がいます。江戸時代、紀州藩で儒学の講義を行った李眞栄(り・しんえい)です。親孝行の大切さを説く「父母状」を作った李梅渓(り・ばいけい)の父と言うと、ピンと来る人もいらっしゃるでしょうか。
 豊臣秀吉による朝鮮出兵の際、捕虜として日本に連れられた一人が眞栄でした。1619年、初代藩主となる徳川頼宣が紀州に入国した直後、1336字に及ぶ上申書を提出しました。平岡さんは「その内容は紀州藩政に大きい影響を与えたものと思え、読めば読むほど、現在の政治にも通じるところがある」と話します。

 その中身、まず平岡さんが着目するのは「藩主たるものは天下に先んじてその憂を憂い、天下に後れてその楽を楽しむ」です。今年、不明瞭な支出が明るみになり、会見中に号泣した兵庫県議がいましたが、自分の利益を先に考えるなんぞもってのほか。一番に考えるべきは世の中のことだと強調します。

 このほか、要約すると「危機にあっては寛大にしておおらかな気持ちを持ち、度量を大きく持て」「政(まつりごと)は徳をもってなす、徳は恵まれない人におよぶ、これこそが政の第一」などとつづられています。書かれている内容は特別なことではなく、ごくごく当たり前のことなのですが、忘れてしまっている政治家が少なくないと感じることが、現在の政治不信に繋がっていると思います。

 私自身、注目したのが、「戒めを取り入れ模範とし、賢を用いるを尊しとする。必ずや国や民の幸とならん。国を治め家を安ずるはみな人を得るにある」の部分。忠告を聞き入れ、それを模範にせよとのアドバイスです。この言葉、逆から見れば、国づくりのためには、市民からの声が欠かせないということではないでしょうか。
 12月14日(日)は衆院選挙の投開票日です。選ばれた議員の方々には眞栄の言葉を心に刻んでいただきたいと思う一方、気になるのが昨今の投票率低下です。11月末の知事選挙は前回を4ポイント近く下回る39・65%。特に和歌山市は29・37%と30市町村で最低で、30・84%だった8月の市長選に続き、実に有権者の3割しか投票に行っていない状況が続いています。政治家に声を届けるその第一歩が、1票を投じることです。(西山)

(ニュース和歌山2014年12月13日号掲載)