阿波おどり、眉山、すだち、吉野川…。紀伊水道を挟んでお隣の徳島市。イメージするものは何ですか? 初めに挙げたものを連想する人が多いと思いますが、今春、訪れて知ったのは〝水の都〟としての一面でした。

 フェリーで約2時間。徳島で暮らす高校時代の友人が迎えに来てくれました。初めに案内されたのが、徳島市内を巡る観光遊覧船。「保険料の200円でクルーズが楽しめる」とすすめられ、船に乗り込みました。

 中心街は〝ひょうたん島〟と呼ばれる吉野川の中州にあり、船は街中を流れる支流を巡ります。川から眺める街の景色は新鮮で、川沿いに植栽が施された幅の広い歩道が続き、オブジェやベンチが並びます。並行して店が軒を連ね、週末はマルシェや演奏会が開かれるそうです。

 船が橋の下を通る際に見上げると、橋の裏側にアニメキャラクターが描かれた幕がお目見え。アニメで街を盛り上げようとする市民団体が「橋の下美術館」と題し、アニメを描いた巨大な幕を貼り付けています。さらに、年末になると主要産業の一つであるLEDを生かし、光るボールをたくさん川に浮かべる「徳島LEDアートフェスティバル」が開かれます。

 約30分のクルーズで、観光スポットやショッピングモールにも寄港。普段と違った交通手段で街を楽しむ文化が根付いているように感じました。

 和歌山市でも近年、水辺を生かしたまちづくりを進める動きが活発化しています。特に、お城の堀だった市堀川を中心に、水辺の景観を生かした店が誕生し、イベントの際はカヌーやクルージングの体験が盛り込まれるようになりました。本紙でも隔週土曜号1面で「ミズベシーン」を連載しており、和歌山の水辺の魅力を様々な角度から切り取って紹介しています。

 徳島の水辺に魅力を感じたのは、アニメやLEDといった地元らしさを生かした楽しみ方が用意されているからのように思います。様々な市民団体や行政、産業界が一体となって〝水の都、徳島〟を演出していました。

 和歌山ではそうした動きが始まったばかりで、徳島はその一歩先を進んでいます。〝水の都、和歌山〟実現へ、川を楽しもうとする気運を市民に広めるのが第一歩。一人ひとりの意識が変われば、川を守り、生かすことへとつながります。海を隔てた隣人から学びとれることはたくさんありそうです。   (林)