ぶらくり丁の雑賀橋から市堀川にかけて、あす9月11日(日)午前10時〜午後3時、カヌー体験が開かれます。ぶらくり丁の活性化に取り組む紀州まちづくり舎が「水辺を身近に感じてもらおう」と企画したイベントです。

 今、市街地では「水辺」をキーワードにしたまちづくりを進める動きがあります。水辺を地域活性化に生かそうと呼びかけるミズベリング和歌山が2014年に発足。今年6月には、市堀川沿いの空きビルを改修した日本酒バーがオープンし、水辺の風情を伝えています。さらに10月には、和歌山市駅周辺の再生を目指す市駅まちづくり実行会議が市堀川でクルーズ体験を行います。いずれも目的は、ただ川にふれあい、楽しんでもらうことだけではないようです。

 市堀川は市街地を流れる5つの川の総称、内川の一つです。戦前の内川はメダカが泳ぎ、子どもたちが遊べるほど透き通った清流でした。戦後の高度経済成長期、工場排水が急増し、下水道整備の遅れから生活排水も垂れ流しに。昭和40年代には、豚の死がいや残飯が流れ、人体に有害なカドミウムの汚染度が全国一高く、悪臭が漂い、「死の川」とまで呼ばれていました。

 それから約50年。内川は戦前の美しさを取り戻したでしょうか。川の汚染度を測るBOD(生物化学的酸素要求量)は、大門川以外は環境基準をクリアしていますが、残念ながら、まだまだ本来の姿にはほど遠いのが現状です。濁った水で川底を確認できず、メダカの姿を見ることもありません。

 ヘドロの除去や下水道の整備など行政の手が必要な部分もありますが、個人ができることもあります。和歌山市によると、内川の一部の川は、汚れの原因の60%が生活排水です。河川愛護活動、美化運動というと気軽に始められるものではなく、腰が引けてしまうかもしれません。しかし、食器を洗う前に新聞紙で油汚れをふき取る、食べ残しをそのまま流さない、環境に影響の少ない洗濯洗剤を選ぶ。そのような配慮なら、私たちが日常でできるはずです。

 毎日のささいな気遣いが、目の前の自然をつくり、未来をつくります。カヌーやクルーズ体験、日本酒バーは私たちが川とつながるきっかけをくれます。水辺にふれ、楽しい体験を重ねると親しみが生まれ、汚す選択はできなくなります。川は私たちの、まちへの愛情を映す鏡。そう思えてなりません。(秦野)

(ニュース和歌山2016年9月10日号掲載)