五輪で銀メダル獲得──。普通なら喜ばしいことだが、素直に喜べない。理由は、目指してきた金メダルに届かなかったから…ではない▼2008年の北京五輪レスリング競技で、和歌山市出身の湯元健一さんが表彰台に上がった。手にしたのは銅メダル。夢見た金メダルではなかったけれど、3位決定戦で勝利し、拳を突き上げた時の表情は今も覚えている▼あれから9年が経過し、今月5日、湯元さんが準決勝で敗れたウクライナ選手に薬物違反が判明し、その選手のメダルがはく奪された。結果、湯元さんが繰り上げで2位となった▼「本当に複雑で、今さら銀メダルと言われても…という感じです」と話す湯元さんは現在、大分県の日本文理大学で指導に当たる。「僕自身もある意味、今回の問題の被害者なので、指導者としてアンチドーピングの考えを世間やスポーツ界へ訴えていかなければならないと思っている」。技、体だけじゃない。誘惑にも揺るがない強い心を持った選手の育成を期待したい。 (西山)

(ニュース和歌山より。2017年4月15日更新)