10年ぶりに友ヶ島へ渡った。最近人気と聞いてはいたが、平日の昼前に船がいっぱいになるほどとは知らなかった▼「雰囲気がスタジオジブリ作品の『天空の城ラピュタ』ぽい」とインターネットで話題になってから、もう随分になる。前に乗った時は筆者を含め、客はわずか3人。若い人のにぎわいを目の当たりにしていると、狐につままれたような気分になった▼とは言え、島は何も変わっていない。だれかがネット上で友ヶ島をみる切り口を変えて示しただけだから当然だろう。だが、視点の変化がこれだけリアルな人の動きを生むのだと、ネット社会の凄みを見せつけられた気がする▼帰港後、港を所在なく歩く人たちがいた。この人の流れを観光振興に…と考えかけたが、それは無粋だと思い直した。ネットを通じ話題になる場所は、大きな資本の操作の及んでいないもの、もしくはそれが朽ちた後のものが目立つ。求められているのはある種のけがれのなさ。下手に手を加えたら、枯れてしまうと思う。 (髙垣)