和歌山市の園部から府中に至る和泉山脈南斜面に計画されている大規模太陽光発電施設に関し、地元住民らでつくるグループが6月、林地開発許可を出さないよう和歌山県に反対署名を提出しました。予定地は、千手川の東西に広がる敷地で、2社が施設を計画しています。

 2つの事業主体がソーラーパネル設置のため、隣接地で広範囲に森林を伐採し、雑草を取り除く除草剤をまくとなれば、山の保水力や川の汚染に不安を感じるのは分かります。グループは7月、電力について勉強会を開き、今後も自然災害や地質、山の植物について学ぶ予定です。

 一方、開発を歓迎する声もあります。予定地周辺にはかつてフォレストシティ計画として、ゴルフ場や住宅、ホテルなどを設け、リゾート地とする構想がありました。計画はとん挫し、付近の山林はそのまま残っています。自然が保護された反面、放置されたままととらえる人は、「荒れた山林が美しくなるなら、その方が良い。土砂崩れが起きないよう、調整池も整備される」との期待があるのです。

 筆者はこれまで何度か、予定地を通る墓の谷行者堂への道や周辺の山を歩き回ったことがあります。行者堂へは山あいを流れる川のすぐ横を通り、パネル設置予定区間を横断します。

 また、周辺の山にはハイキングコースがあり、尾根からは和歌山市街を望むことができます。コースの大半はきれいに整備されているのですが、余り人が通らないであろうコースだと、落石がゴロゴロし、暗くて荒れたところもありました。

 発電施設計画が出る前、市は大型ソーラー発電施設が景観に与える影響を最小限に抑えるよう規制するガイドラインを設けています。目立たなくするためソーラーパネルの設置角度や周辺への植林などを定めたものです。もちろん、2社の計画はいずれも規制対象です。

 災害対策としての貯水池や、ソーラー発電による気温上昇を抑えるための植林、また、実際にパネルがどんな状態で配置されるのか。計画の詳細はこれからです。

 実際に歩いてみれば、自然あふれる山や、どんなところを川が流れているのかは実感できます。安心安全と景観の両面から考えるためにも、これを機会にふるさとの山に関心を持ち、地域についてしっかり考えるきっかけとしたいものです。(小倉)

(ニュース和歌山/2017年8月12日更新)