家の窓から外を見ると、冬の海に向かって釣り糸を垂らしている人がいる。この時期だと、岩場の影に潜むガシラでも狙っているのだろう。子どものころ、祖母が煮付けにしてくれた。毎日のように魚を食べたのを懐かしく思う▼北海道、北陸のサンマやスルメイカが記録的な不漁だ。すさみ町でも昨年、カツオが捕れないとニュースになった。海水温の変動や海流の蛇行が原因として報じられるが、忘れてならないのは漁をする人たちが減っていることだ▼5年ごとに国が調査する統計「漁業センサス」によると、県内の漁業従事者は2008年の3922人から13年は2907人に減少した。海産資源の豊富な県とのんきに思い込んでいたが、漁業者全体の高齢化が進む中、今年の調査はどのような結果となるか▼正月、実家に帰ると寿司屋の父親が渋い顔をしていた。冬が旬のブリも、天然物が市場に出回ることは少なくなったという。慣れ親しんだ刺身や煮付けまで食卓から失われないように祈る。 (芝﨑)

(ニュース和歌山/2018年1月20日更新)