この季節、通勤途中に何ヵ所かの庭先でひまわりを見かけます。黄色い大輪がまぶしい、夏を代表する花です。暑さに負けず、背筋をピンと伸ばしているかのような堂々としたその姿に、昔は元気をもらっていましたが、いつからか見ているだけで、身が引き締まるようになりました。

 理由は2つあります。1つは、阪神・淡路大震災の「はるかのひまわり」の話です。1995年1月17日、神戸市に住んでいた小学6年生、加藤はるかさんが倒壊した家の下敷きになりました。7時間後、近所の人たちががれきの下で見つけましたが、残念ながらすでに息絶えていました。

 半年後、はるかさんの遺体が見つかったその場所で、ひまわりが大空に向かって咲きました。その花は震災で多くのものを失った人たちに希望と勇気を与えました。近所の人は〝はるかのひまわり〟と呼び、その種を広めました。復興の象徴として全国で育てられています。

 もう1つは、京都府警発の「ひまわりの絆プロジェクト」。2011年、京都府内で4歳の東陽大(はると)くんが亡くなりました。交通事故でした。

 生前、陽大くんが通っていた幼稚園から握りしめて持ち帰ったのが、育てていたひまわりの種でした。陽大くんが生きていた証にと、ご両親はその種を植えました。

 13年、この事故を担当した警察官が陽大くん宅を訪れた際、ご両親からひまわりの種を託されました。「このひまわりがあちらこちらで咲けば、陽大も色んなところへ行けると思う。もう交通事故は嫌です」とのメッセージとともに──。

 その後、京都府内の警察署、幼稚園、保育園、小中高校などで、ひまわりが花を咲かせました。2年前、その輪は京都を飛び出して全国へ。和歌山県警察本部の前でもプランターで育てられています。

 平穏な日々が続くと、どうしても防災への意識が薄くなりがちです。また、気象庁が「一つの災害と認識している」と言うほど、連日、記録的な暑さが続く今年は、運転中の注意力が散漫になってしまうことがしばしばあります。そんな私に、道路脇のひまわりは一際目を引く鮮やかな黄色い花で、命の尊さを教えてくれているんだと思うようにしています。皆さんもぜひ、ひまわりのメッセージを受け取ってください。 (西山)

(ニュース和歌山/2018年7月28日更新)