近年、路面電車があるまちの再生に注目が集まっています。乗客数の伸びが大きいのは富山市の富山地方鉄道で、2012年からの5年間で24%増加しました。続いて、札幌市(14%)と京都市(14%)、福井市(12%)の順。車社会といわれる昨今、驚異的な伸びといえます。松山市や熊本市は延伸計画もあります。これらの都市の共通点は観光まちづくりを積極的に行っている点です。

 紀州徳川御三家の一つとしての観光都市和歌山市も、この路面電車を復活させてみてはいかがでしょうか。内閣府などを巻き込んで、地方創生の新しいモデル「観光と公共交通機関一体型モデル」を提示するのです。

 無論、路面電車の導入は簡単ではありません。実際、否定的な意見も多いのですが、リスクを取らないとリターンが来ないのも事実です。財源の総額の3分の1は市民力が試される寄付とします。寄付の見返りは一定期間、無料パスの提供。

 ずばり、ターゲットは「観光客、小中高生、高齢者」。高齢者向けに低床電車とし、一部の子どもは無料にする。ドイツの一部の地域が実施しているように、観光客は1週間、バスや路面電車を乗り放題にする。

 こうすることで消費も刺激されます。私が専門とする経済学では消費の役割が最も重要です。いわゆる消費が活発化しない都市に資金循環・再生はありません。排気ガスを出さないので環境にも優しい。

 しかも、都市の観光地化は地元客だけではなく外部から消費が行われるので特に期待される分野といえます。かつて大学生のころ、イギリスのケンブリッジという学園都市に5年ほどいましたが、ここは学園都市でありながら観光都市としての面も有しています。都市の観光地化は21世紀のまちづくりの要ともいえます。観光との親和性が高い路面電車で、和歌山の古くて新しい魅力を出せそうです。

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 まもなく令和。新たな時代への提言を、10人からいただきます。次回は4月20日㊏です。

(ニュース和歌山/2019年4月13日更新)