南海和歌山市駅前周辺はかつて本当に活気があった。昔ながらの食堂・喫茶店、商店あり、ファストフード店あり。昨年撤退した髙島屋も衣料品のほか、電機製品、またゲームセンターまであり、人の行き交いは多かった▼個人的に思い出深いのは、地下食品街。「山都」という札幌ラーメンの店が好きだった。時折、友だちと自転車で行き、コーンバターラーメンを食べた。おいしかった▼そういえば、ここ何年か前に、市駅近くで昭和の面影を保っていたラーメンバスが姿を消した。本紙でも「和歌山遺産」というコーナーで取材依頼したが、実現できなかった。あっさりしたラーメンの味は忘れがたい▼まちの記憶をたどろうとして食の思い出になってしまった。実際、豊かな町というのは五感を通じて心のなかにその像を残すものではないだろうか▼まちづくりというとコンセプトや個性とか、概念的に入りがちだが、その場所から何を感じるか。五感で得られるものを見過ごしてはいけないと思う。(髙垣)
(ニュース和歌山2015年2月21日号掲載)