先日、ある小学校の授業を見学させてもらった。担当の講師が、東日本大震災で両親を亡くし、今でも2人が帰って来ると信じて毎日手紙を書き続けている女の子の話をした。「伝えたいのに伝えられない子がいる」▼その話を聞いた児童たちは、父と母に向け、普段言えない気持ちを手紙に書き、授業に来ていた親の前で読んで手渡した。「いつもわがまま言ってごめん」「大きくなってあまり会話しなくなったけど、本当はお母さんが大好きです」「毎日おいしいご飯を作ってくれてありがとう」。親御さんが涙するかと思ったが、読んでいる子どもたちが顔を真っ赤にして泣いていた▼素直な気持ちを伝えるのは難しい。相手が家族ならなおさら難しい。大人になればなるほどもっと難しくなる▼3月下旬、進学で地元を離れる子、他府県へ転勤、転校する友人。様々な別れがある。また会おうと思ってもすぐには会えなくなる。伝えられる時に、伝えるべきことを、素直に。小学生の涙にそう気付かされた。(岡村)

(ニュース和歌山3月14日号掲載)