日赤和歌山医療センターは、夜間や休日に高度救命救急センターを受診する患者を対象に、診療費に加え、「時間外選定療養費」として5400円を4月から徴収することを決めました。ただし、他病院からの紹介状がある、受診後に入院が必要になった場合などは対象外。簡単に言えば、軽症者にのみ支払いを求めるということです。

 緊急性がないにもかかわらず、「平日の日中は仕事」「救急だとすぐ診察してもらえるから」と安易に救急外来を訪れる〝コンビニ受診〟は全国的な社会問題です。和歌山も同様で、日赤和歌山医療センターの場合、昨年1年間の時間外救急患者は3万2755人。1日あたり約90人のうち8割近い約70人が軽症者でした。中には熱が37度をわずかに超えるぐらいだったり、かすり傷程度だったりという患者もいたそうです。

 同病院は、生命に危険のある重篤な患者に対応する3次救急医療機関です。夜間、休日の医師は10人で、そこに軽症者が集まっては、本来の業務に支障を来します。時間外選定療養費の徴収は県内では初めてで、導入にあたっては悩んだそうですが、「高度救命救急センターの機能維持を最優先に考えました」と説明します。

 コンビニ利用が目立つのは救急車も同様です。和歌山市消防局の場合、出動は2014年が2万0091件で、うち、結果的に入院する必要がなかったのが67%。10年前の04年は1万5695件、軽症者が58%ですから、いずれの数字も増えています。担架を持って駆けつけたものの歩いて救急車に乗り込む人や、繰り返し利用する人も…。

 血を見て動転し、慌てて119番したものの、軽症ですんだケースもあるでしょう。しかし、悪質と判断せざるを得ない事例は少なくありません。市消防局警防課は「軽症者への対応が増えると、重症者の搬送が遅れる可能性があり、助かる命が助からないケースが心配される」と警鐘を鳴らします。

 24時間営業の店が増え、何かと便利な世の中です。その便利さに慣れ、医療サービスも好きなときに、気軽に受けられると知らず知らずのうちに勘違いしていないでしょうか。救急外来、救急車とも安易な利用は、地域の救急医療を支える医師や看護師、救急隊らを疲弊させます。自分勝手なコンビニ利用が、地域の安心を揺るがすことを今一度、心に留めるべきです。(西山)

(ニュース和歌山2015年3月28日号掲載)