阪神・淡路大震災から20年を経て、県は今年度から耐震ベッド、耐震シェルター導入に補助を始めます。場合によっては10万円程度で耐震ベッドを手に入れる事も可能。住宅倒壊から最低限命だけは守る緊急避難的ながら、利用しやすい金額で進めることは意味があります。

 県が古い住宅の耐震診断に補助を始めたのは2004年。この年度は2032件でしたが、翌年以降は徐々に減少。東日本大震災が起きた11年度に増加に転じ、13年度までに1万1000件余りが診断を受けました。

 一方、診断から改修に至ったのは、04年度は4件ながら07年度は109件で、その後は2ケタでしたが、11年度以降は102件、181件、179件。これまで900件余りが改修しました。とは言うものの、「今年度末までに2万戸を耐震化」とする県の目標からすれば、あまり進んでいないのが実状です。

 やはり改修となると、まとまった金額が必要です。和歌山市の場合、改修費は180万円前後が多く、補助を受けても80万円余りは自己負担。しかも、工事は家全体が条件で、「よく使う1部屋だけ」は対象外です。

 実は、中国の四川大地震で学校崩落が報道された直後、08年5月の小欄で1部屋耐震を提案しました。まだ、耐震改修への意識は高くなかったころで、改修は診断のわずか3・6%。1部屋耐震だと費用が安くなり、使いやすいはずとの思いでした。ですが、当時も今も、「1部屋だけの補強だと、逆に全体として弱くなることがある」との説明で、実現していません。

 ただ、耐震が必要な建物は建築から30年以上経ち、大勢生活していた家に1人だけなのも珍しくない。ほぼ使わない部屋まで耐震化に踏み切れる人は、そう多くないでしょう。県外には1部屋耐震に補助するところもありますから、きちんと補強すれば大丈夫ではとも思えます。

 それでも、補助制度は少しずつ広がりを見せています。06年に「避難重視型」として、比較的簡易な耐震工事に補助。昨年からは建て替えや、木造以外も対象にしました。和歌山市は今年から、耐震工事に伴うリフォームにも補助を始めます。

 県は「新施策を進めることで波及効果が出る。補助を使わない建て替えや補強も含め、2万戸の耐震化を早期に実現したい」との意向。選択肢が増えることで結果として耐震促進につながることを願います。(小倉)

(ニュース和歌山2015年4月25日号掲載)