今春、介護保険制度が改正されました。国は特別養護老人ホームへの入所基準を厳しくし、住民の助け合い活動を推進するなど、地域での介護事業の充実化に本腰を入れ始めました。

 今後3年間の福祉施策を示した県の「わかやま長寿プラン2015」によると、和歌山県内の高齢者(65歳以上)の割合は、2010年の27・4%から、30年には36・2%になると見込まれています。伴って増えるのが介護を必要とする高齢者です。要支援・要介護者は08年の5万1000人から昨年は6万3000人に。支える人と支えられる人の需要と供給は、12年度はバランスがとれていましたが、30年度には支える人が約6000人不足すると推計されています。

 県人口が減少し、要介護者が増えれば、介護職員や家族の負担は大きくなります。そんな人たちを支えるため、昨年2月からみその商店街にあるアートサポートセンターRAKUで毎週土曜に開かれているのが「ケアする人のためのカフェ~ぼちぼちIKOKA」です。

 介護職員や家族介護に疲れた人などこれまで約200人が訪れ、介護での悩みや不安を傾聴ボランティアに打ち明けています。「老々介護で夫を世話してきたが、自分も高齢になり将来が見通せない」「大切な家族に辛い言葉をかけてしまった」と相談内容は様々です。主催する共助のまちづくり協会の島久美子さんは「身近な人に相談しても『頑張って』『自分の親なのに』と励ましや説教されることが多い。『分かっているけど辛い』という介護者の気持ちを受け止める場の必要性をつくづく感じます」と話します。

 カフェの名前には「頑張りすぎてしんどくなっている人に、肩の力を抜いてもらい、ぼちぼちいきましょうよ」との思いが込められています。島さんは「介護は24時間休みなし。カフェの回数を増やしたいですが、マンパワーが足りない。高齢社会を迎える今、取り組みはますます重要になります」と語ります。

 県では従来の就職フェアやキャリアアップ講座に加え、今年度新たに、高校生向けに介護資格の取得講座を開きます。しかし、地域で高齢者とその家族が安心して暮らしてゆくには、人材の発掘や育成に留まらず、介護現場で頑張っている人のサポートが大切です。介護する人の心をいかに支えるか。今後の福祉を考える上で欠かせない視点ではないでしょうか。(林)

(ニュース和歌山2015年5月23日号掲載)