蒸し暑い日が続き、クーラーのリモコンにすぐ手が伸びるようになった。熱帯夜の日は、4年間暮らしたバリ島を思い出す。赤道直下のインドネシアにある小さな島で、イスラム教徒が世界一多い国にありながら、島民の9割がヒンドゥー教徒という独特の島▼「神々の島」とも呼ばれ、森羅万象すべてのものに精霊が宿るアニミズム的信仰が息づいている。女性はヤシの葉の皿に色鮮やかな花びらや草、米粒を入れた供え物を1日に何百個も作る。それを毎日3回、家の門や炊事場、近所の寺など至る所に祈りを唱え、捧げる▼それほど信仰心のあつい島なので、給料のほとんどが神事や村の祭りに消える。エアコンを買う余裕のない家庭が多く、夜は風通しのよい軒先に家族が集まっていた。とりとめのない会話をしながら、バナナの葉のうちわであおぎ子どもを寝かしつける▼エアコンの快適さはないが、家族で過ごす余裕と豊かさがあった。むっと蒸せるような暑い夜、南の島のまったりと流れる時間が懐かしい。(岡村)

(ニュース和歌山2015年7月25日号掲載)