2015年10月末、和歌山市が人口減少対策として、「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を発表しました。今年度から5ヵ年計画で、雇用数や転入数、合計特殊出生率などを高めるため、企業誘致を進め、外国人観光客の誘客促進、UIJターンを始めとする移住・定住促進、婚活イベントへの助成や道路網整備といった施策をあげています。

 無施策なら、2060年に約21万人にまで減少する見込みですが、各種施策の実施により33万人から36万人を確保するとの展望です。

 ただ、この展望には疑問符が付きます。各種施策の内容が悪いと言いたいのではありません。それぞれ大切で悪くはないのですが、特色も感じられない。「人口減少対策」としてインターネットで検索すると、あっちでもこっちでも似た取り組みにヒットします。和歌山市の施策も新規ばかりでなく、多くは以前から行われており、その上で人口減が進んでいるのです。

 加えて、東京、大阪など大都市圏でもバブル崩壊後に地価下落が続いたことや、タワー型マンションの増加、また、都心部にある大学などの拡張が規制されていた工場等制限法が02年に廃止されてから大学の回帰が進んでおり、経済状況や法律面で人口の都市流入の後押しとなっているのが実状です。

 こんな中、地方の自治体同士で綱引きをしていても、大幅に転入者が増えるとは考えにくいのです。大体、近隣市町で人を取り合いし、その結果、転入者が増えたといって、喜んでいて良いものでしょうか。

 もう10年余りも前に本欄で、和歌山市が1997年に策定した長期総合計画にある人口予測の内訳に「5万人規模の大規模分譲が予定されているので、5万人増」と、冗談のような算定があったと指摘しました。今回の目標値を見る限り、現人口から微減した数字を目標値としているように見えてしまいます。

 厚生労働省は地方創生・人口減少克服に向けた対策として、「全国一律やバラマキでない政策に総合的に取り組む」としています。が、本当に一律でない政策をいうなら、工場等制限法の復活など、思い切った対策が必要です。

 そうでなければ、市が現実味のある人口予測を見据え、それに応じたまちづくりを進めてゆかないと、いつまで経っても同じ事が繰り返されてゆくと考えてしまうのです。   (小倉)

(ニュース和歌山2015年11月14日号掲載)