イチョウの葉が散り始めた午後、伏虎中学校の裏通りを歩いた。野球部だろうか、頭を丸刈りにした生徒がほうきで落ち葉を集めていた。前からスーツ姿の男性が歩いてきた。生徒は掃く手を止め、男性に「こんにちは!」とあいさつした。男性は笑顔で返した▼「知り合いだったのかな。気持ちの良いあいさつだな」。その光景を見て思った。生徒の前を通り、道を抜けようとすると、その生徒が再び、手を止めた。「こんにちは!」。まっすぐこちらの目を見て、深々と頭を下げてくれた▼とっさのことに驚き、小さな声で「こっこんにちは…」としか返せなかった。道を通る人、だれにでも生徒は手を止めてはあいさつを繰り返していた。寒い中、ほっぺを真っ赤にしながら▼今年も残り半月余り。忘年会や仕事の追い込み、歳末の準備に忙殺され、人と接することさえ流れ作業になってしまっていた。すがすがしい少年のあいさつとまっすぐな目に気付かされる。身が引き締まり、コートの襟を立て直した。(岡村)
(ニュース和歌山2015年12月12日号掲載)