125年前、串本沖で遭難したトルコ軍艦エルトゥールル号の乗組員を救助、介抱した話が題材の映画『海難1890』。祖先救出に恩義を感じていたトルコが30年前、イラク軍に空爆されたイランから日本人を救い出した史実も紹介され、好評だ▼また、広村(現・広川町)の濱口梧陵が津波襲来を知らせるため稲むらに火を放ち、村人を高台に誘導したのが1854年11月5日。その日が今年、世界津波の日として国連で認められた。いずれも誇るべき郷土の先人の話だ▼ただ、エルトゥールル号事件や稲むらの火について、一般にどの程度知られていただろうか。「してあげた」ことをわざわざ口外しないのは、日本的な奥ゆかしさであり美徳。とは言え、伝えることに余りに無関心だったのではないか▼事実を事実として伝えることは、先人の奉仕精神そのものの継承につながる。『海難1890』や「世界津波の日」をきっかけに、奉仕精神が自然な形で次の世代の心に入ってゆくなら、本当に嬉しいことなのだ。(小倉)

(ニュース和歌山2015年12月26日号掲載)