さつまいもや和菓子などの特産品があり、蔵造りの街並みが残る埼玉県川越市。このまちで、若手経営者や芸術家たちでつくる「川越スタイル倶楽部」が世界に通じる川越ブランドをつくろうと、活発に活動しています。

 特徴は、海外でのプロモーションです。2007年には大胆にも、在ニューヨーク日本国総領事館を借り、特産品や地域の歴史をアピールしました。その後、韓国や中国、シンガポール、イタリアでもPR。地元の人同士で議論しても、外へとアピールできる切り口が見つからないため、視点を海外に移し、外からだと何が見えるのかと試みているのだそうです。

 先月、その倶楽部の6人が海南市を訪れました。代表を務める日疋好春(ひびき・よしはる)さんの曾祖父、信亮さんが黒江生まれで、1934年に3町1村が合併して海南市が発足した際に尽力した縁からです。

 滞在中、紀州海南ひなめぐり実行委員長の東美智さんと意見交換した際、私も取材で同席させてもらいました。海南を視察した川越の皆さんが強調したのは「海南にはすごい可能性がある」ということ。視察の中心だった紀州漆器に加え、お菓子の神様をまつる神社があること、鈴木姓発祥のまちであることなど、宝の山に見えたようです。

 一方、発信の仕方にはアドバイスが。例に出したのがみかんで、関東では和歌山より愛媛の方が印象が強いそうです。「愛媛にはみかんジュースが出る蛇口があるとニュースで流れる。もちろん、そのニュースだけの印象ではないんだろうけれど、マスコミが話題に取り上げやすい工夫があれば」。そして漆器ならば、海南駅の改札を漆塗りにしてはどうか。市内の飲食店は必ず漆器で提供するメニューを最低一つつくろう。商店街のレジを全て漆塗りにするのもいい──。立て続けに出てくるアイデアは、海南側からすれば外からの貴重な意見でした。

 今や和歌山の観光資源となった中華そばも、日本一のラーメンを決めるテレビ番組で紹介され、人気に火が付きました。眠っているお宝はまだまだあるはずです。川越スタイル倶楽部は、埋もれた地元の魅力を引き出すだけでなく、分かりやすい言葉にして伝えるのを役割だと考えているとのこと。宝の地図は地域の外にあるかもしれないこと、そして宝の持ち腐れとしないためには工夫が欠かせないことを教わりました。  (西山)

 

(ニュース和歌山より。2017年3月25日更新)