突然ですが、〝キツネの小判〟ってご存知ですか? 私は最近まで聞いたことすらなかったんですが、先日、取材で訪れた和歌山県立自然博物館で展示をしていて、妙に興味をそそられました。

 展示を見ると、キツネの小判は地面に落ちており、100個集めると幸せになれるとか、願いがかなうとか、子どもたちの間で言われているそうです。その後、取材先で出会った小中高校生数人に聞いてみたところ、確かに半数ぐらいの子は知っていました。集めると幸せになるというのは四つ葉のクローバー以外では初耳です。

 同館の内藤麻子学芸員に聞くと、毎年、今の季節、「子どもが拾ってくるんですけど、何なんでしょう?」と小学校低学年ぐらいの子どもを持つ親御さんが質問に来るとのこと。根強い関心の高さを受け、今年初めて展示を企画しました。

 このキツネの小判、正体はハゼノキの種です。和ろうそくの原料になるハゼノキの実には、脂肪分が含まれます。夏に花が咲き、秋に熟した実を鳥たちが食べます。脂肪分を吸収した後、種子はフンにまざって地面に落ち、雨で洗われて種だけが残る。これを子どもたちが集めているそうです。

 興味ついでに「ハゼノキ」をインターネットで検索しました。果実は座薬や軟こうの材料、また、石けんやクレヨンの原料にもなるんだとか。あっ、そうそう、本紙でも9月、紀美野町志賀野地区でハゼノキの一種、ブドウハゼを生かして地域再生を図る動きがあることを伝えました。ざっとネットで調べるだけで、次々と広がっていきます。知的好奇心を満たしてくれたキツネの小判、幸せを招いてくれるというのはあながち間違いではありません。虫や花が少ない季節、子どもたちが身近な自然に目を向けるきっかけになっている点でも貴重な存在です。

 内藤学芸員は展示を始める前、山までハゼノキを調べに行ったそうですが、帰ってきて、自然博物館のすぐ目と鼻の先にハゼノキがあるのを発見しました。「同じように、幸せとか、日々の心配の解決方法とか、案外、身近な所にあるんですよね」。小さな種はそんなことも教えてくれているのかもしれません。

 ちなみにハゼノキはウルシ科で、ウルシオールという成分が含まれており、肌が弱い人は木に近づくだけでかぶれてしまいます。葉や枝に触らないよう、お気をつけください。 (西山)

(ニュース和歌山/2017年11月25日更新)