つい先日、小学5年の娘に聞きました。「おじいちゃん(=私の父。69歳)は高齢者?」「高齢者」「おばあちゃん(=私の母。65歳)は?」「高齢者じゃない」

 この会話は今、65歳以上とされる高齢者の年齢を75歳以上に見直そうと、日本老年学会と日本老年医学会が提言したとのニュースをテレビで見たのがきっかけでした。1956年の国連の報告書で65歳以上が高齢人口とされていることから、国際的に「高齢者=65歳以上」となっているようです。

 これを75歳以上と一気に10年上げるのが今回の提案です。医学的には、現在の高齢者は10〜20年前に比べ5〜10歳若返っているそう。両学会は65〜74歳を「准高齢者」とし、仕事やボランティア活動に励んで社会の支え手に回ろうと呼びかけます。ちなみに、75〜89歳を「高齢者」、90歳以上は「超高齢者」としています。

 「私の中で高齢者は80歳以上」と力強く語るのは、昨日、82歳を迎えた和歌山市の藤田俊夫さんです。現役のベンチプレス選手で、2年前、80代として世界で初めて100㌔に成功しました。「今の65歳はまだまだ若い。私と同年代でもいろんな趣味に打ち込んでいる人は多いですから」と理由を説明。「もちろん、人によって健康状態は違いますが、70代までは仕事や社会活動を頑張り、80代からが余生だと思う。電車やバスを無料にするなどの恩恵を受けられるようにし、その余生を安心して過ごせるような社会がいいですね」

 両学会の提言後、インターネット上では「年金の支給開始年齢を遅らせるための布石だろう」との声が多く見受けられますが、両学会は今回の提案と社会保障制度の変更を結びつけるのは慎重にと求めています。元気なお年寄りが増えるのはうれしいことですが、定義を見直すなら、「財政が苦しいから、高齢者も働け」ととられるような一方的なものでなく、藤田さんの言う安心の担保との両輪で進められることが欠かせません。

 さて、冒頭の娘とのやりとり。提案のいう「准高齢者」にあたる2人のうち、おじいちゃんは高齢者で、おばあちゃんは高齢者ではないと考える理由を聞くと、「おばあちゃんはいつも動いていて元気だけど、おじいちゃんはテレビ見てるか、新聞見てるか、メダカにエサやってるかだから」とのこと。子どもが見て高齢者じゃない高齢者が多い社会がいいですよね。(西山)

(ニュース和歌山2017年1月14日号掲載)