本紙記者のコラム・2006年6月14日号掲載
気の利いた少子化対策を
      
 和歌山の郷土玩具「瓦猿」をご存知でしょうか。お腹に優しく桃を抱いた素朴な猿の人形で、和歌山市田中町が「瓦町」と呼ばれるほど瓦づくりが盛んだった江戸時代、職人が仕事の合間に作ったのが始まりだそうです。
 この瓦猿は、子授けや安産のお守りとして親しまれてきました。子どもがほしい人や妊娠した女性が、同市有本の日吉神社に奉納されている瓦猿を借り受け、無事に出産を終えると1体を購入し、2体にして神社に返す風習があります。今も神社には数十体の瓦猿が並んでいます。
 厚生労働省は1日、2005年の「合計特殊出生率」、つまり1人の女性が一生に生む子どもの数を「1・25」と発表しました。03年、04年こそ1・29で横ばいだったものの、今回は0・04ポイントの大幅減でした。福井と高知をのぞく45都道府県が前年割れで、和歌山も0・02ポイントマイナスの1・26。全国的に少子化が加速しています。
 政府・与党がまとめている少子化対策の素案を見ると、乳幼児がいる家庭への手当拡充、不妊治療への助成拡大など経済面の支援が中心です。一方で厳しい財政状況の中、どこから財源を持ってくるかが課題になっています。
 大きな財源を必要とせずとも、地方自治体や企業、地域のレベルでできることがあるはずです。例えば子どもが生まれたとき、和歌山市の場合、出生届を本館一階の市民課に提出します。さらに乳幼児医療費受給資格証を申請するため東別館1階の医療福祉課へ、そして児童手当の申請に東別館2階の子ども家庭課へ。加えて国民健康保険加入者は本館1階の国民健康保険課へも足を運ばねばなりません。親など身近に子どもを預けられる人がいなければ、生まれたばかりの乳児を抱えて回らねばならず大変です。これらを1つの窓口で済ませられれば、かなり便利です。
 結婚観の変化、仕事と子育てを両立しにくい社会など出生率低下には様々な要因がありますが、今も神社に並ぶ瓦猿を見ると、子どもをほしいと願う人は多いはずです。役所の窓口一本化や、政府・与党案にあるように出産育児一時金の支給手続きを簡素化し入院時の現金準備を不要にするアイデアなど、財源ありきでなくとも知恵をしぼれば気の利いたサービスは可能。地味でも配慮のあるサービスを増やし、心配の種を1つずつ減らすことが、出生率アップにつながると思います。(西山)