中国への思い 写真に
山肇さん遺作集
『黒竜江省にて』出版
『黒竜江省にて』 かつて軍隊生活を送った満州(現・中国東北部)を再訪し、人々の暮らしや風習を撮り続けた故・山肇さんの遺作集『わたしの中国 黒竜江省にて』が出版された。
 山さんは1986年、中国での戦友の遺骨収集に参加。戦後の長い空白を経ての再訪だった。以来、亡くなる昨年まで中国訪問は11回を数え、とりわけ東北部黒竜江省には8回の撮影取材を行い、オロチョン族など狩猟民族をヒューマンな視点でとらえた記録写真を数多く残した。
 遺作集はカラー刷り、64ページ。自然の中にとけ込み、素朴にたくましく生きる人々の生き生きとした表情が目につく。また、祭りや狩猟、夕げの様子、自然の恵みを生かした生活用具、カラフルな遊牧民の晴れ着、雄大な自然風景のカットなど、中国東北部の独特の風土を伝える作品集になっている。
 山さんは43年、現役入隊して中国で軍務につく。敗戦後シベリアに抑留され、重労働に従事させられて辛酸をなめた。47年に復員。郷里の和歌山市に帰り、電気工事業を営む。そのかたわら趣味の写真にこり、写真愛好家の集まり・葵フォトグループで技術を磨く。二科展や国際写真サロンなど著名なコンテストで活躍したが、入選・入賞した作品のほとんどは黒竜江省で撮ったものだった。
 中国へは単独で旅行。一回で一カ月近くを費やして外国人がなかなか入れない奥地まで精力的に回った。また、近年は隣国のモンゴルまで足を伸ばし、砂漠の風景や遊牧民の生活を撮影していた。昨年夏、77歳で亡くなった。
 こうした思い入れが深い中国での写真を編集して作品集にするのが山さんの念願だった。その遺志を受けて妻の千代さんが、葵フォトグループ代表の亀忠男さんに相談。亀さんはグループのメンバーに協力を呼びかけ、膨大な数のネガの中から作品を選び出し、編集した。
 また、旧知の日本を代表する報道写真家・浜口タカシさんに序文を依頼。快く引き受けた浜口さんは、交流のあった山さんを偲んで「後世に伝え残す貴重な作品集。山肇さんの写真は永遠に生きています」との文章を寄せた。
 写真仲間の温情に感謝する千代さん。故人の思いを代弁するかたちで「主人は常々、どこの国のどんな人も、毎日の生活を大切に精一杯生きているんだなと申し、孫の時代にはどうぞ戦争など無いようにと願っておりました。そんな主人の気持ちをくみ取っていただければ幸いです」と序文に記している。

写真=中国東北部独特の風土を伝える写真を収録)