県内で語り継がれてきたむかし話をまとめた『読みがたり 和歌山のむかし話』(県小学校教育研究会国語部会編、日本標準発行)が25年ぶりに復刊された。
同書は、25年前、語り継ぐ人と場をなくし、滅びかけていたむかし話を今のうちに書き残しておこうと、県内の小中学校の教員が3年がかりでお年寄りから、方言や土地独特の語り口調を聞き取り、そのまま書き起こした。和歌山市の「六さんドンドコ」「三つの難題」、海南市の「カエル合戦」など65話を集め、挿絵も現職の教員が描き、1977年に初版を発行。79年にかけて7回増刷される人気書となった。
今回復刊した背景には、心の問題や家庭内、地域内のコミュニケーションが教育の大きな課題になっているなか、子どもたちに人間らしい感情を育てる方法として読み聞かせが学校や地域で広がっていることがある。
出版した日本標準の担当者は「実際に語り伝えられてきたむかし話は、耳で聞くだけで話が理解でき、読み聞かせに最適な素材。家庭や地域のコミュニケーションづくりに役立つ」。また、伝承文学は書く文学とは違った豊かな表現や言葉のリズムが確立しており、「土地への愛着と人生経験が一緒に語られ、自然な形で自分が住む地域への愛情が育まれ、国語力や郷土愛を養うことにつながる」と話す。
一方、初版当時にこの本を読んだり聞いた人が子どもや孫を持つ年代となり、「また読みたい」「本がほしい」といった声が出ていた。
復刊版は県内の小学校校長や教諭でつくる編集委員会が内容を検討。もとの形をできるだけ生かしながら、問題のある言葉をカットしたり、難解な言葉に注釈を入れ、読みやすいよう文字を大きくした。
同委員会の中村正一・和歌山市立貴志小学校校長は「紀伊山地の霊場と参詣道が世界遺産に登録されましたが、和歌山のむかし話はこれらの信仰にまつわる話が多い。また、不思議な妖怪や動物にまつわる話が多いのも特徴です」。物語は、当時語られたままの和歌山弁でつづっており、「だんだんと方言が廃れてきているが、味のある和歌山弁を残していきたい。そして、ぜひ家族が一つの部屋に集って語り聞かせ、心を通い合わせてほしい」と話している。
B5変型判、256ページ。税込み1500円。問い合わせは日本標準(東京03・3334・2620)。 |