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| 1994年に廃線になったローカル線野上電鉄。人々の記憶から薄れつつある中、神奈川県在住のカメラマン、松村康史さん(34)が写真集『野上電気鉄道〜ありし日の想い出と今』を出版した。13年前に作成した『フォトスケッチ 野上電気鉄道』を再構成し、新たに現在の様子や資料、インタビューなどを加えた。3月には紀美野町で出版記念写真展を開く。松村さんは「忘れられつつある今だから新たに写真集を出しました。野鉄の“十三回忌"の意味も込めて」と懐かしそうに目を細める。 |
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| ◆3月 紀美野町で出版記念展 | ||||
日方駅から登山口駅まで11・4キロを結んだ野上電鉄は1913年創立。16年の営業開始から約80年間沿線住民の足として愛されてきたが、モータリゼーションの波に押され利用者が減少、惜しまれながら会社解散の形で最後を迎えた。あれから13年。駅や線路だった場所は次々と道路などに整備され、面影はほとんど残っていない。 松村さんは大阪芸術大学写真学科2回生の時、初めて野上町(現紀美野町)をドライブした。海辺の町、神奈川県茅ヶ崎市で生まれ育った松村さんにとって、田園風景は馴染みがなく、憧れでもあった。そんな中をガタゴト走る、小さく古びた電車に一瞬にして釘付けになった。それからは当時下宿していた大阪から時間が許す限り野上町を訪れ、夢中で撮影を重ねた。ある時、撮影中に偶然知り合った地元の医師、田伏俊作さんから廃線の話を聞いた。松村さんは「ただショックでした。地元出身でも、住んでいたわけでもないですが、なんとかして残せないものかと考えました」。反対運動をする住民と、松村さんの存続の願いが合致し、地元有志のバックアップで野鉄の写真展を2度、野上町で開いた。2度目は廃線直前の94年3月に行い、この時用意した写真集『フォトスケッチ〜』は3日間で3000冊を完売。野鉄を撮り始めてから1年後のことだった。同月31日、廃線の日を迎えた。 「あれから10年以上たち、地元でも野鉄を忘れかけている人がいます。子どもたちは実際に見たこともなく、このまま記憶からも消えていくのはあまりにももったいない」と松村さんは出版の意図を語る。今回はデザイン、レイアウトや文章の作成、編集ほぼすべてを一人で手掛けた。休みごとに茅ヶ崎から足を運び、現在の線路跡をたどった様子も収めている。 写真集には、「日方・連絡口」「春日前」など全14駅のかつての光景が収められている。松村さんの見守るような視線で、四季の移ろいの中を淡々と走る野鉄や、利用する小学生の生き生きとした表情、駅舎でのんびり話をする女性たちなど、ノスタルジックに光景を切り取る。また廃線後、取り壊されていく様子も撮影した。「個性ある電車に魅力を感じたのももちろんですが、同じくらい取り巻く環境、利用する人々にひかれました」 2月14日には、和歌山市の全小学校、海南市と紀美野町の全小中学校に写真集を贈った。「野鉄を知らない子どもたちに存在した事実を知ってもらい、環境問題や交通弱者にとっての電車の役割などを考える契機にしてほしい」と松村さん。 廃線後車両のひとつを譲り受けた、野鉄を愛する仲間である田伏さんは「今回の写真集は廃線後から現在の状況なども追加され、野鉄の資料としても素晴らしい。13年の間にカメラマンとしてさらに腕を磨いた松村さんが、またここで写真展を開いてくれて本当に嬉しい」と感慨深く話す。 出版を記念した写真展「野上電気鉄道 タイムトリップ1994〜十三年前の野鉄に会えるひととき」は3月3日(土)から11日(日)まで、紀美野町小畑のギャラリーHACHIで。午前10時から午後6時(最終日は4時)まで。問い合わせは同ギャラリー(073・489・2371)。 写真集は宮井平安堂ほかで取り扱い。3150円。 写真上から=『野上電気鉄道〜ありし日の想い出と今』より、松村康史さん |
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