市街地にありながら和歌山城、岡公園と自然に囲まれたフランス料理店、JOY味村。オーナーシェフの味村正弘さん(64)は数々の料理コンテストで輝かしい成績を残すフレンチの重鎮だ。「料理は素材6割、技術3割。最も大切なのは残り1割のセンスです」と、現場第一主義を崩さず、県産食材をふんだんに使ったフランス料理の創作に情熱を注ぐ。

日本人向けの味つけ

mimura1 開店22周年特別ランチ。メーンの魚料理、カレイのポワレは濃厚で豊かな味わいが口に広がる。かすかな酸味はソースに含む県産の柑橘だ。

 「バターやオイルで味付けするフランス料理を、じゃばら、すだち、ゆずなどでさっぱり仕上げます。和歌山の人はしょう油、柑橘になじみ、シンプルな味を好む。和歌山らしさをいかに織り込むか。そのセンスが大切です」

 食材は、日高のクエ、加太のタイ、下津のハモと新鮮な地魚に加え、自宅菜園で育てた野菜を使用。毎朝畑で収穫しながら、メニューを考える。

 「和歌山は海、山、川と自然に恵まれ、食材も豊富。小さな川魚やジビエ肉も使い、和歌山を深く味わえる料理を常に意識しています」

 

 

 

世界料理五輪で金

 15歳の時に洋食店でアルバイトを始め、料理人を志した。中学卒業後は大阪や広島などのレストランで腕を磨いた。

 「初めは皿洗い。当時は材料の分量が書かれたレシピもありません。洗う前に皿や鍋についたソースをつまみ、味を研究しました。みんなが出勤する前の早朝に厨房を借りて試作を重ねましたね」

 33歳で大阪食博覧会金賞に輝き、その後、世界料理オリンピック金メダル、グルメフェア金賞など受賞を重ね、1994年、自らの店を構えた。

 「『賞に見合った料理を提供しないと』と身が引き締まりました。静かな環境で料理を楽しんでもらいたくて、この場所を選びました」

料理はファッション

mimura2 厨房に立ちつつ、主婦や子ども向けに講習会を開き、フランス料理の魅力を伝える。昨年は料理人として初めて和歌山市文化功労賞を受けた。

 「料理は時代や流行で移り変わるファッションと同じ。お客さんを飽きさせないためにも、新しい味の探求に終わりはありません。その楽しさを伝え、料理人を目指す次世代を増やしたい」

JOY味村…和歌山市片岡町1-1-29。ランチは午前11時~午後3時、ディナーは5時半~10時。月曜定休(祝日の場合は翌日に振替)。☎073・426・4433。

(2016年11月9日号掲載)