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 今年、開店50周年を迎えた和歌山市中之島の洋菓子店「パティスリーエルヴェ」。オーナーシェフの橋本憲司さん(41)は、紀の川市の極めて希少な蜜から「和歌山ミツバチの奇跡バウム」を開発した。ニホンミツバチがみかんと柿両方の花から吸収しブレンドした蜜で、素材を厳選しシンプルに打ち出す橋本さん会心の焼き菓子。県洋菓子協会副会長として後進の指導にもあたる橋本さんに新バウムや菓子づくりのこだわりを聞いた。     (文中敬称略)

ミツバチの奇跡

――珍しい蜜を使ったお菓子と聞きました。

橋本 紀の川市の村上養蜂さんのはちみつ「和歌山ミツバチの奇跡」です。みかんと柿、両方の花から蜜を吸ったニホンミツバチが体内でブレンドしたものです。紀の川市のようにみかんと柿を同じ山でつくるところはまれで、また開花時期がずれている2つの果物の花をまたいで飛ぶハチは限られています。気候が少しくるうと取れない、奇跡の蜜なんです。

――味は。

橋本 濃厚です。私はかつてお菓子の材料の店で働き、国内外の様々な蜜を知っていますが、蜜の中の蜜と言っていいですね。口にしてすぐ焼き菓子のバウムクーヘンに向いていると思いました。味が濃いと、焼いても香りがしっかり残り、風味がとばないんです。

――評判は。

橋本 「奇跡バウム」はこの蜜を際立たせることにこだわりました。蜜は転化糖と言い、素材全体をしっとりさせる。特にこの蜜はしつこくないのに深い甘みがある。バイヤーの方は一口で、販売を即決してくれます。

――海南市の福祉施設の製造なのですね。

橋本 福祉施設や作業所は、お菓子をつくる所が多く、設備も充実しています。ここにプロの目が入り、いい品をつくれば、売り上げが上がり、働く障害者の方の力になれると、知人とともに考えたんです。「奇跡バウム」はその第1弾。今後も協力していきます。

欠かせない〝化学〟

――店は50周年です。

橋本 お菓子をつくる父の後ろ姿を見て育ち、高校卒業後、食への興味でこの世界に入りました。大阪の菓子店と材料の会社で修業し、15年前にUターンしてきました。父と7年間働きましたが、かなわないと思いましたね。とにかく数をこなす。昭和の職人は違います。

――こだわりは。

橋本 かつてはコンテストにもよく出場し、2013年には全国菓子博覧会で金賞をもらいました。今はシンプルでスタンダードなお菓子を心がけています。お菓子づくりに欠かせないのはpH(ペーハー)です。素材との兼ね合いの中で、酸性、アルカリ性、中性とバランスをいかにとるか。化学ですよ。実際は、みかんや柿、いちじく、キウイ、桃と和歌山の豊富な素材と戯れている感じですが。

――看板商品は。

橋本 プチチーズケーキのフロマージュです。小さいですが、フランスのチーズを50%配合した、ぜいたくな品です。もう一つはロールケーキ。ソフトな口あたりの地中海の花の蜜を、生クリームと生地に練り込んでいます。人気ですよ。

――今後の展望は。

橋本 自分の納得できるお菓子をつくりたい一心です。「これ使えない?」といい素材を提案してくれる農家の方がいます。そういう方々と一緒に仕事をするのが楽しいです。みんなで取り組み、うまくいけばみんな幸せになれる。その幸せを大切にしたいですね。

【パティスリーエルヴェ】
和歌山市中之島285−9
073・472・7388
午前9時〜午後8時。水曜定休

 

【読者プレゼント】「奇跡バウム」5個入りを10人にプレゼント。応募方法はニュース和歌山2016年1月13日号紙面をご覧下さい。締切は1月20日。

(ニュース和歌山2016年1月13日号掲載)