おばあちゃん、お母さんが手塩にかけた家庭の味を受け継いでもらおうと、和歌山市屋形町の「さだこの浅漬工房」の大倉さだこさん (68)は、1998年からぬか床を販売し、〝家庭でお漬け物〟の食文化を守ろうとしている。今や全国にファンが広がり、最近はおふくろの味を求め、ぬか 漬けに挑戦する定年退職後の男性が増えている。夏野菜が出回る漬け物のおいしい季節を前に、大倉さんにぬか床への思いを聞いた。 (文中敬称略)

日本の食文化継承

16041301_sadako――ぬか床を売り始めたきっかけは。

大倉 昔はどこの家でも漬け物を漬けていました。おばあちゃんのぬか床を母親が受け継ぎ、家庭の味を守りました。ぬか床は漬け物店の命。本来は企業秘密ですが、日本の食文化を絶やしたくないと思ったのです。

――無添加、化学調味料なしを打ち出します。

大倉  自分の子どもがアトピーだったことが大きいです。ぬか床は、和歌山のしいたけ、北海道の昆布でだしをとり、塩を溶かし込み、減農薬で育てた米ぬかを煎 (い)ってまぜます。塩はミネラルたっぷりの静岡の平釜塩。野菜を捨て漬けして1ヵ月置き、熟成させます。一口で「おいしい」と言ってもらえるよう意地を かけています。アドバイスもしていますよ。

――今、おいしいのは

大倉 春キャベツ、大根、アスパラですね。でも、これから出てくる夏野菜を漬ける方が一番多いですよ。あまり知られていませんが、枝豆、長いももおいしいです。

――ファンは全国に。

大倉  テレビ出演とインターネットで広がりました。また、ブログに載せてくれる方が多く、評判になりました。うちのぬか床で長年漬けてくれていた奥さんが亡くな り、ご主人が続け、追加注文してくれます。全国で味を引き継いで頂き、うれしいです。ぬか漬けの風習のない県でも挑戦してくれているんですよ。

――お店を始めたのは。

大倉  97年です。それまで食堂を営んでいました。そこで旬野菜の浅漬けを皿盛にし、無料サービスしていたんです。それを気に入った方が雑誌で紹介してくれ、近 鉄百貨店和歌山店から商品化のお話を頂きました。近鉄の催事場に出店したら大評判で、漬け物一本にしました。近鉄にも紀州路コーナーにずっと品を置いて頂 いています。

――お店には旬の漬け物が並びます。

大倉 5月下旬から並ぶ水ナスが一番人気。秋には、葉大根、小松菜など。お客さんのアイデアを試すこともあるんですよ。

とれたて野菜すぐに

――こだわりは。

大倉 自然の恵みを受けた露地野菜を選ぶ。信頼できる農家の野菜を使う。添加物、調味料を使わない。野菜本来の味を大切にする。こだわり4ヵ条です。朝収穫した野菜を新鮮なうちに漬けるのも心がけています。

――今後は。

大倉 こだわりにほれて頂き、お中元はうちの品と決めてくれているお客さんもいます。こだわりを守り、お客さんの期待にこたえ続けたいです。

【さだこの浅漬工房】

和歌山市屋形町3−45
午前9時〜午後6時。木曜定休、日祝不定休
☎073・428・1234


(ニュース和歌山2016年4月13日号掲載)