Q.38歳女性。左下腹部に違和感があります。女性も脱腸になりますか。

fuku◆消化器外科・一般外科 福外科病院 日本外科学会認定専門医
日本大腸肛門病学会認定専門医 福昭人院長

A. 一般的に脱腸(そけいヘルニア)は男性に多い病気で、男女比は4:1といわれます。しかし、20歳代〜40歳代までを見ると男2:女1となり、若年層では女性の割合が増えます。

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 ご質問者のような若年女性の脱腸は、外そけいヘルニアが多数を占めます。腸がはまり込んで(嵌頓)緊急手術となる危険性は比較的低いものの、自覚症状がある方は要注意です。一方、50歳以降の中高年者の場合は、外そけいヘルニアだけでなく、内そけいヘルニアや大腿ヘルニアの発症も多く見られます(図1)。さらに、これらを複数同時に発症したり、ヘルニア部分が大きく腫れ上がって嵌頓状態になる方もいます。
 治療は手術が原則です。以前は、腫れている部分を直接切開する「切開法(図2)」しかありませんでしたが、最近は、内視鏡を使った、より痛みの少ない「腹腔鏡下手術(図3)」が主流です。入院は、日帰りか短期滞在が基本です。まずはかかりつけ医にご相談ください。

 

Q. 最近、便が細く鉛筆ぐらいの太さしかありません。原因は?

raku◆外科 楽クリニック 藤田定則院長

A. 「近頃、便が細くなった」と受診される方は大勢いらっしゃいます。

 便が細くなる原因には、次の3つが考えられます。
 ①便自体が軟らかいために、太くならない=最近非常に多い症状です。便を軟らかくする酸化マグネシウム(医療機関で処方されるマグミットなど)の薬を多めに服用していたり、ヨーグルトやアルコール等を毎日摂取している方によく見られます。便が必要以上に軟らかくなっていることが原因です。
 ②肛門自体が狭い=便が軟らかくなりすぎると、もれるのを防ぐために肛門の緊張が強くなります。日常的にこの状態が続くと肛門が狭くなってきます。また、切れ痔が慢性化したり、温水洗浄便座などを多用した場合も同様に肛門が狭くなります。
 ③直腸がんなどで肛門に近い部分が狭くなっている=直腸の先端は肛門につながっています。この肛門に近い部分に大きな腫瘍やがんが出来た場合、肛門が正常でも腸管が狭くなるため、便が細くなります。
 便を軟らかくする薬を飲んでいないのに、ここ半年ほど便が細かったり、下剤の調整や生活習慣を改善しても便の太さが変わらない場合は、医療機関の受診をお勧めします。

 

Q. 立ち座りや歩く際に、膝が痛くて悩んでいます。

◆リハビリテーション科 今村病院 理学療法士 島田 桃子先生

A.  膝の痛みにはさまざまな症状がありますが、大半の方は、体を動かす際に膝に多くの負担がかかり、それが痛みにつながっています。
 膝の負担を減らすには、股関節をうまく使うことがポイントです。そのためには、腹筋群の筋力が重要です。腹筋群が筋力低下すると体幹が固定されないため、股関節が体幹を固定しようと働いてしまい、結果として、膝を酷使することになります。腹筋群や股関節周囲の筋力を強化し、股関節を使えるようになるトレーニングを実践します。
 また、人間の体で、地面と接するのは足部だけです。足部の筋力が低下すると、足部に硬くなるところや過剰に動くところが出てきてしまい、足部の機能が破綻し、身体の荷重が分散できず膝に負担がかかってしまいます。足部の筋力強化やストレッチングを実践し、足部の機能を本来の状態に戻さねばなりません。また、「足底板療法」といって、その人にあった足底板を作成し、靴の下に貼り付け、膝の負担を軽減する方法もあります。
 「膝の痛み」と言ってもあらゆる症状があるため、一人ひとりにあった治療が必要です。一度専門医に相談してみてはいかがでしょうか。

 

Q. 髄膜炎菌ワクチン接種について教えてください。

minakatasin◆循環器内科 みなかたクリニック 南方常夫院長

A.  細菌性髄膜炎は、細菌感染による髄膜炎の総称です。症状は、突然の発熱や激しい頭痛、項部(うなじ)の硬直、せん妄等の意識障害などです。原因となる細菌は多数ありますが、そのうち▽インフルエンザ桿菌b型(ヒブ)▽肺炎球菌▽髄膜炎菌に対してはワクチンがあります。なかでも、ヒブと肺炎球菌ワクチンは乳幼児の定期接種となっています。

 細菌性髄膜炎の一つである髄膜炎菌性髄膜炎は、初期症状がカゼに似ているため早期診断が難しく、他の細菌性髄膜炎に比べ症状が急激に進行するのが特徴です。髄膜炎菌は飛沫あるいは分泌物によりヒトからヒトへ感染します。主な流行地域はアフリカ中央部ですが、アメリカやイギリスといった先進国でも年間1千人以上の発症が報告されています。これらの国では留学時などに、髄膜炎菌ワクチンの接種を求められることがあります。
 日本における髄膜炎菌ワクチンの接種推奨者は2歳以上で、流行地域への渡航者、学生寮などで集団生活をする人、無脾症や脾臓摘出後の人、免疫抑制状態の患者などです。なお、海外と比べ日本国内での症例報告は少ないため、日本国内での感染リスクは低いと考えられています。

(ニュース和歌山2016年5月28日号掲載)