南米の風をつかめ

160806_yotto リオデジャネイロのシンボル、コルコバードの丘のキリスト像が見下ろす海上が決戦の舞台。〝海のF1〟とも呼ばれるセーリング49erFX級に、競技歴20年の宮川惠子選手(写真右)と、まだ3年の髙野芹奈選手が挑む。

 五輪本番に向け、5月と7月に現地で合宿した。「潮の流れが複雑で、起伏のある丘に囲まれた海面なので、風も不安定ですごく予測しづらい」と髙野選手。

 複雑な風を読むのは、宮川選手の得意とするところ。「各国の選手が苦戦している。難しい海面だからこそ上位が安定せず、私たちにもチャンスがある」。昨年の紀の国わかやま国体後に組み、まだ9ヵ月のペア。リオの風が味方につくか──。

楽しくないと勝てない

 30歳と18歳、ちょうど一回り年齢の離れたペアが普段練習するのは和歌浦湾。宮川惠子選手は舵(かじ)を持ち、船を操作するスキッパー、髙野芹奈選手は帆を調整し、前後左右に移動しながら船のバランスを取るクルーを担当する。

160806_saring 髙野選手は競技歴3年と経験が浅い分、伸び盛りでもある。最も間近で見守る宮川選手は「以前は持ち前の運動能力をフルに使った勢いのある動きがほとんどでしたが、経験を重ね、頭で動きを理解し、繊細かつ的確に動けることが増えてきた」と相棒の成長に目を細める。

 一方の髙野選手、「船をうまく走らせるため、互いの意見をしっかり聞き、乗り越えていけるようになってきた」とコンビネーションに手応え十分。「目標はメダルレースに出ること、そして入賞です」と力強い。メダルレースとは、最初の4日間の総合成績で10位以内に入ったペアだけが出場できる最終日のレースだ。

 海外勢に比べ小柄な2人。パワーを必要とする強風時は大柄な海外勢が有利だが、風が弱い時は、宮川選手の風をつかむ能力が生きる。「レースでは前向きに取り組むことを忘れず、コミュニケーションをしっかり取りたい。セーリングを20年やってきて、行き着いたのが〝楽しくないと勝てない〟ということ。五輪だと気負わず、自分の全部を出せるレースをしたい」

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【セーリング・女子49erFX級】

 8月12、13、15、16日に各日最大3レースずつ。決勝は18日。

写真提供=日本セーリング連盟

(ニュース和歌山2016年8月6日号掲載)