刺身で出せる紀州赤鶏にこだわる焼き鳥店、楽(Gaku)オーナーの太田隼人さん(32)。歯ごたえがあり、味わい深い鶏肉を求め、実家の養鶏場で飼育方法を工夫し、納得できる鶏に行き着いた。2013年末、和歌山市に開いた楽で鶏肉料理を提供し、食べた人の幸せそうな笑顔に喜びを見いだす。

自らさばいて提供

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 店はビルの2階。玉砂利と石の階段は、落ちついた日本料理店の雰囲気を出す。中に入ると、威勢良い声が飛び交い、煙の中を香ばしさが漂う。

 「新鮮な紀州赤鶏を味わってもらうため、湯浅で朝びきした鶏を毎日5、6羽、自分でさばき、持ち込みます」

 祖父の養鶏場を継いだ父を、小学生のころから手伝った。大学は大阪に出て、派遣会社に就職。Uターンし持ち帰り焼き鳥店を始め、25歳で湯浅に「YaKiToRi遊(ゆう)」をオープンした。

 「開店時から5種類の鶏の刺身を出しました。ある時、全ての部位は生食できると気づき、どうすればさらにおいしくなるかを考えました」

エサ、飼育法に工夫

 養鶏場を継いだ兄は当時、メーンを鶏から紀州鴨に切り替えつつあった。そんな中、目をつけたのが赤鶏だ。一般に60日程度で出荷する鶏が多いが、平飼いで100日ほどかけ、じっくり育てる。鴨のエサを取り入れ、配合に気を配った。

 29歳で和歌山市に「楽」を開店した。「遊」のころからこだわりは、肝。通常の肝より脂がのり、深い味わいの白肝を持つ鶏に目標を定めた。

 「理想の鶏は、成長しきる直前のもの。身がしまり、歯ごたえがある。刺身でおいしいと、焼いてもいい。うま味を最大限に引き出すため、部位により、白、黒のしょう油、土佐酢などタレを変えます。兄が力を注ぐ鴨も、あぶり、つくねと用意しています」

楽しんで仕事を

 11月に新店を出す。従業員への引き継ぎを視野に、当初から3店は出す予定だった。

 「『遊』は、遊びのように楽しんで仕事をしたいと名付け、『楽』は従業員が付けてくれました。飲食店は、納得できるものを出し、喜んでくれれば成立します。楽しく仕事をし、幸せな気持ちになってもらうことがうれしい」

【紀州鴨と赤鶏の食べ処 楽(Gaku)】
和歌山市太田1-14-7 オオトヨビル2階。午後5時〜深夜0時。月曜定休。☎073・499・5830。

(ニュース和歌山2016年9月28日号掲載)