県庁裏のビルの一角にあるパティスリー「ケイト シィ」はタルトを主力にした焼き菓子専門店。フランスやイギリスのヴィンテージ小物で飾られた愛らしい雰囲気の店内には、オーナーの竹田ミレーさん(45)が丁寧に焼き上げたタルトやクッキーが所狭しと並ぶ。ヨーロッパの息吹を感じられる焼き菓子の数々は、訪れる人の心をつかんで離さない。

ヨーロッパの物語刻む

170208_takeda
 アンティーク調の扉を開けると、焼き菓子の甘い香りが広がる。ランプに照らされた小さなガラスケースに「クリムト、ノルマンディ…」と聞き慣れないケーキが並ぶ。

 「クリムトはオーストリアの画家、クリムトの絵からインスピレーションを受けて作った塩キャラメルとコーヒー風味のチョコレートタルト。フランス北部のりんごの産地から名付けたノルマンディは紅茶入りの生地に煮詰めたりんごとカラメルムースを合わせています。フランスの伝統菓子の作り方を基本に、和歌山の旬の果物やヨーロッパのリキュールを取り入れ、オリジナルを作っています」

焼き立てにこだわり

 幼いころから食ともの作りに関心があり、30歳を機に10年勤めた住宅会社を退職し、ロンドンの菓子専門学校へ1年間留学した。留学中に出合ったのが、ヨーロッパの家庭で食べられるタルトやパイといった焼き菓子だった。

 「ケーキと言えばふわふわで華やかな物と思っていた日本でのイメージがくつがえりました。小麦粉とバターの香りが立ち、かみしめるほど味わいがする。魅了されました」

 帰国後すぐ、32歳でタルトが主力の店を構えた。当時はまだタルトが知れ渡っていなかった時代。初めは順風満帆ではなかったが、ヨーロッパの焼き立ての味わいを和歌山で広げたいとの信念が徐々に実を結び、花を咲かせた。  「開店当初、『スポンジのケーキはないの?』と帰られるお客様も。それでも、思いを込めて丁寧に作り続けているとタルト目当てに何度も来てくれる方が少しずつ増え、今では紀南や県外から注文してくれる方も多くなりました」

170208_tarte

 竹田さんの味に魅せられたファンの客足は絶えず、夕方には売り切れることもある。

 「その日の分だけを毎朝手作業で焼いています。お客様の幸せな時間を彩る、記憶に残るタルトを作り続けたい」

 一品一品に丁寧な手仕事の味わいが生きている。

パティスリー ケイト シィ
和歌山市雑賀屋町36雑賀屋町ビジネスパーク102号
午前9時半〜午後7時。月曜定休
☎073・433・6377

 

(ニュース和歌山より。2017年2月8日更新)