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 遠くから和歌山城の姿を見つけられますか。見えないと思い込んでいませんか。その気になって探してみると、意外な場所から見えるものです。

 江戸時代に書かれた『紀伊国名所図会』の「山口驛(えき)より遙に御城を望む図」に、遠くに見える天守閣が描かれています。城から北東へ約10㌔先です。最近は建物が増え、この付近から望める場所も限られてきましたが、その姿は、和歌山城の丘は見えず、天守閣だけが大きく見えるのです(写真)。江戸時代は、さらに遠くから望むことができたことでしょう。

 せっかくですから少し足をのばして、東西南北から眺めてみましょう。いろんな形の天守閣が楽しめます。天守閣が主役、あるいは付属する建物が主役で天守閣が脇役の光景もあります。堂々とそびえる勇姿に、また、やさしく優美な姿に見えたりもします。

 朝・夕の陽に浮かぶ時、雨に煙る時、もちろん四季折々に映える姿などさまざまな光景を楽しませてくれるのです。そんな姿を、思い思いに楽しめば、もっと身近な存在の和歌山城にあえると思います。

 少し近づいて見ましょう。市街地に入ってくると丘の上に建つ天守閣と連立する建物群がよくわかります。それでも天守閣は、丘の木々に埋もれることはありません。

 もっと近づいて見ましょう。水堀と石垣が、多くの緑に混じって見えてきます。その中に白い天守閣も目に入ってくるでしょう。

 「城」と言えば、天守閣のことと思っていませんか。大小の石で積まれた石垣、時には水鳥がのんびりと浮かんでいる水堀。これらがすべてスクラムを組んだ仲間達です。この光景が「城」なのです。

 そこには、人の知恵と工夫が満載です。それらを眺めながら、ゆっくりと和歌山城を楽しみながら歩きましょう。

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ふるさと和歌山城:水島大二さんが第1・3土曜日に和歌山城の歴史や城郭について紹介、解説します。

 水島大二…1947年、海南市生まれ。日本城郭史学会委員。県内、全国の城郭に詳しく、『定本和歌山の城』(監修)など著書多数。近年は、講師を務める野外講座「和歌山城隅から隅まで楽しもう」が人気を集める。

(ニュース和歌山より。2017年3月4日更新)