『紀伊国名所図会』に「四村谷 本川(有田川)の南の渓谷にて、中原、河合、二澤、北野川ここに居る。岩倉神社 粟生村にあり。四箇村の産土なり。四村川の奔流、南より来たりて、ここに合流す」とある。四村川は、神域を流れる川なのだ。

 一番奥に、かつて村人の信仰を集めた「不動の滝」がある。そこに至る四村川には、数多くの滝が存在する。そのうちのひとつが、この無名の連瀑である。滝の奥に滝があり、その奥にも滝が流れ落ちる様は、人を聖域に誘(いざな)う扉のようだ。扉を次々と開いてゆくと、最後に不動の滝が現れる仕掛けである。

 この場所も今は住む人はなく廃れている。林道は荒れ果て、さらに朽ち果てた橋を渡り、道なき道をただ歩くしかない。

(ニュース和歌山/2017年10月21日更新)

大上敬史さん作製「和歌山県の滝」で、県内の滝が紹介されています。