昔、空海が修行のため山にこもっていたとき、大雨が降り、濁流に巻き込まれた。空海が祈祷すると、一条の滝が現れ、たちまち水はこの滝に飲み込まれ、水が退いていった。こうして、空海は無事に山を越えることができたのだという。

 『紀伊続風土記』に「孤支瀧」の名で登場する。孤支とは、聞きなれない言葉であるが、分かれていたものがひとつになることを言うのだろう。大洪水をひとつにまとめあげた奇跡の滝。どこかの国の神も、海をふたつに拓いた伝説があるように、大洪水を一本の滝にする壮大なスケールの逸話だ。さすが空海である。

 のちに、村人たちが雨乞いをしたという伝承もあるが、よく見るとネクタイを結んだような形の可愛い滝である。

(ニュース和歌山/2018年2月3日更新)

大上敬史さん作製「和歌山県の滝」で、県内の滝が紹介されています。