4世紀、インドより渡来した裸形上人は、那智大滝の滝壺で修行中、金に輝く如意輪観音像を見つけた。それを本尊として安置したのが青岸渡寺如意輪堂。滝には実は、今も私たちに感得を与え続けている秘密がある。

 地球温暖化と言われるにもかかわらず、2月7日、那智山はマイナス4度を記録した。極寒の那智山へ震えながら行ってみると、水しぶきが凍った滝は真っ白だ。やがて、陽が昇り始め、大きな地響きを立てて水の流れのあるところの氷柱が崩れ落ち、氷結の割れ目から、黒い影が現れた。

 私はこの影が、後光がさす仏様のように見えた。まさに青岸渡寺にまつられる伝説の如意輪観世音菩薩。観音様は三重塔の方角を向き、何を仰っしゃろうと、その御姿を現されたのだろうか。

(ニュース和歌山/2018年2月17日更新)

大上敬史さん作製「和歌山県の滝」で、県内の滝が紹介されています。