息づく意識の継承を評価

 濱口梧陵の稲むらの火にまつわる広川町の防災文化が5月24日、文化庁の日本遺産(※)に認定された。タイトルは「『百世の安堵』〜津波と復興の記憶が生きる広川の防災遺産」で、西岡利記町長は「町の防災文化や防災遺産が受け継がれ、今も暮らしに息づいていることが評価されました。これからも日本遺産を構成する文化財を活用しながら、魅力的なまちづくりに全力で取り組んでいきます」と決意を新たにする。

 魅力が詰まった文化財をつなぎ、「ストーリー」として発信する日本遺産。今回のストーリーを構成する文化財には、安政の津波後に梧陵が築いた長さ600㍍、高さ5㍍の広村堤防(国史跡)、安政の津波の際、梧陵が稲むらに火を付けて誘導した広八幡神社(国重要文化財)、同じく避難場所となり、危機を知らせた鐘楼が残る法蔵寺(同)、毎年11月に開かれ、災害で亡くなった人の冥福を祈り、広村堤防に土盛りする津浪祭などが入っている。

 稲むらの火の館(同町広)の﨑山光一館長は「館内には防災啓発施設の津波防災教育センターがあります。海の近くに住んでいない人も沿岸部にいる際に津波が起こる可能性はある。日本遺産認定が、〝大きな地震が起きたらすぐ避難〟と、もう一度心にとどめる機会になれば」と願っている。

写真=1903年に始まった津浪祭では広村堤防に小学生らが土を盛る(写真提供=広川町)

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日本遺産…文化財そのものではなく、歴史的経緯や地域の風土に根ざした伝承、風習などを踏まえたストーリーを、文化庁が認定するもの。県内からはこれまで、「鯨とともに生きる」「絶景の宝庫 和歌の浦」「『最初の一滴』醤油醸造の発祥の地 紀州湯浅」が選ばれている。

(ニュース和歌山/2018年6月2日更新)