室町時代、多くの修験者が熊野に向かった。彼らの目的は紀伊山地に散らばる滝の巡礼だった。

 ある日、修行中の僧侶が滝に打たれていると滝壺に光を見た。顔を近づけると、たしかに金色に光る何かがある。そっとすくい上げると、それは一寸八分の黄金色に輝く観音像であった。神徳を得たと感じた僧は、祠を造った。以来、川又観音と呼ばれたという。深山幽谷滝ともいい、滝の水で目を洗えば眼病が治るという厄除け観音だ。

 和歌山の名水百選に選ばれ、赤い鳥居をくぐると県天然記念物の大きな栃の木があり、あたりはシャクナゲが美しく咲き誇る。滝の落口からは水が互いに交差して、菱形の格子状に落ちる。その美しい姿から、菱の滝と呼ばれている。

(ニュース和歌山/2018年7月14日更新)

大上敬史さん作製「和歌山県の滝」で、県内の滝が紹介されています。