9月1日は「防災の日」。和歌山市のアマチュア落語家、小笠原浩一さん(56)は、「ゴスペル亭パウロ」の高座名で、防災にまつわる知識を笑いと共に届ける〝防災落語家〟として活動します。第1土曜日に紹介する「#イマワカtalk」は、小笠原さんに落語の魅力とそれを生かした取り組みについて尋ねます。

高座へ年40回

──落語との出合いは。

 「クリスチャンで、元々は教会で聖劇をしていたのですが、教会が移転して劇をするスペースが狭くなりました。そんな時、落語会に行く機会が。一人で何役も演じ、人の心をつかむ魅力に心をうたれました。特に扇子を使って子どもがアメを食べる仕草があり、本当にアメがあるように見えたんです。劇で伝えていた聖書の教えを、落語なら表現できると考えました」

──どうやって腕を磨きましたか。

 「まず、自宅でDVDを見てマネする。しかし、全然面白くならない。ある日、和歌山弁落語で知られる桂枝曾丸さんが講師を務める教室のOBで、アマチュア落語グループ、紀の会の公演を聞いたところ、想像以上に面白かった。早速、落語教室へ申し込みました。50歳の挑戦でした」

──どんなことを教わりましたか。

 「目線や顔の向きなどの所作、落語ならではの言葉遣い、手ぬぐいや扇子の使い方と一から学びました。半年受講して挑んだ初めての発表会は緊張のあまり頭の中が真っ白に(笑)。けれど、イベントなどに呼ばれ、『もっと演目を増やしたい』と思い、毎年、落語教室を受講して枝曾丸さんの指導を受けています」

──普段どんな活動を。

 「聖書の教えを落語で伝える福音落語家として県内外で活動しています。聖書の様々な場面やお話を落語作品に直してくれる仲間がいて、毎年1作ずつ新作を届けます。また、福音落語以外にも、『愛宕山』『癪(しゃく)の合薬』など古典も覚えました。年間40回近く、高座に上がります」

落語で防災

──防災の大切さを落語で説きます。

 「防災落語は1年前に始めました。枝曾丸さんが始め、私も防災士の資格をとりました。作品は15分程で、小学生防災士の定吉と母親が、防災について面白おかしくやりとりします。世界中の地震の6割が日本で起きていること、国内には断層が2000近くあり、和歌山は中央構造線があるなど身近な物事に結び付けて話します」

──どんな工夫を。

 「知識だけでなく実践できるよう、生活で役立つ知恵を入れます。災害用伝言ダイヤル『171』、トイレや風呂で揺れた時の対応、非常持ち出し袋は実物を見せながら中身を紹介します。笑いの中で自然と防災知識が身につきます」

──他には。

 「避難所の過ごし方を紹介する防災落語の第2弾を10月14日(日)に加太小で、ペットの防災をテーマにした第3弾を11月4日(日)にビッグ愛でお披露目します。防災以外では、還付金詐欺やオレオレ詐欺といった社会問題を扱った作品もあります。よくある詐欺の手口を再現し、最終的に犯人が改心してお金を返す人情話で注意を呼びかけます」

──今後の抱負を。

 「人から説明を受けるだけだと、聞いていて眠くなるし忘れてしまう。落語だと集中して聞くことができ、笑いの中に織り込まれた学びも聞く人の心に深く残ります。こうした落語の力を生かし、ひきこもりや様々な依存症者といった社会的に弱い人に寄り添う落語家として、活動を続けていきたいですね」

【出演情報】

 ◎9月1日(土)午後3時、和歌山市鳴神のなるコミ。無料。宇都宮病院(073・471・1162)
 ◎9月2日(日)午後1時半、同市塩屋の日本イエス・キリスト和歌山教会。無料。同教会(同445・6909)。

(ニュース和歌山/2018年9月1日更新)