昔、男が滝で魚を釣り、帰ろうとすると、籠の魚が一匹残らず無くなっていた。驚いた男は魚を探して滝壺に潜った。滝の裏にくぼみがあり、中には立派な屋敷が。糸繰りをしていた美しい女に尋ねると、「ここは人間の来るところではありません。本当なら命がないところですが、今日は主人が留守なので助けてあげます」と、硯の形をした美しい石を差し出した。

 帰ると、家(土井家)では男の三回忌が行われていた。死んだと思った男が生きて帰ったのでみな驚いた。男は一部始終を話したが、信じてもらえず、石を見せると、みな幸せな気分になった。

 村人は「土井家には神様がいる」と敬うようになり、石は八幡神社の御神体となった。だが、今はもう石は無いという。

(経路…国道371号から三尾川橋を渡る。神社から徒歩)

(ニュース和歌山/2019年2月16日更新)

大上敬史さん作製「和歌山県の滝」で、県内の滝が紹介されています。