農薬や肥料を使わない自然栽培を行う農家らの会「自然の郷きのくに」。副会長を務める紀の川市桃山町段の豊田孝行さん(43)は医師との兼業で桃栽培に取り組みます。同会が4月から1年間開講する自然農業塾で講師を務める豊田さんに思いを聞きました。

出勤前に畑へ

──農業と医師の〝二刀流〟だそうですね。

 「実家が桃を中心に栽培しており、今は母と2人で野菜も含め、約1㌶の畑で育てています。その母は元看護師で、子どものころ、職場に連れて行ってもらう機会が多く、そんな中で病気やケガをされた方を治療し、感謝してもらえる医師になりたいとの思いが芽生えました。総合病院に勤めた後、開業しましたが、忙しさから体を壊し、今は和歌山市と大阪府計4ヵ所の病院に非常勤で勤務しています」

──両立は大変では?

 「月曜から金曜までは医師として勤め、このうち3日は当直もこなしています。可能な日は出勤前に畑で汗を流します。土日は農業ですね」

体をつくる食

──なぜ自然栽培を?

 「過労で体調を崩した時、いわゆるジャンクフードと呼ばれるものばかり食べていました。それがきっかけで食を見直そうと思うようになりました。自分で作る野菜は無農薬。桃は9年前から超減農薬で栽培しています。以前は農薬を年10回使っていたのに対し、今は3月に縮葉病予防のため、使う1回のみ。最初の6年は収穫量が3割に落ちたものの、土が安定してきた最近は7割になっています。虫は鳥やクモが食べてくれ、雑草は上の方だけ刈れば桃と共存できる。インターネット販売で好評で、飲食店からの注文を多くいただきます」

──所属する「自然の郷きのくに」主催の自然農業塾、2年目を迎えます。

 「昨年は20〜70代の約50人が参加してくれ、うち6割は農業関係者以外でした。『農薬や肥料を使わず、本当に育つの?』と半信半疑でしたが、光合成細菌や乳酸菌などを使い、環境へ負荷をかけずにちゃんと栽培できると分かってもらえたと思います。今年は〝食農医健康セミナー〟を担当します。医療のお世話にならないための体づくり。それには食が大事です。自分で農作物を作ることで食への興味が深まり、今後の食とのかかわり方をそれぞれが考えてもらえればうれしいです」

写真=桃の開花前にせん定を行う豊田さん

 

自然農業塾

 座学コース=4月〜来年2月に全6回。紀の川市西大井の打田生涯学習センターほか。光合成細菌やもみがら堆肥(たいひ)などの作り方を学ぶ自然農講座と、豊田さんによる食農医健康セミナーが各3回。6000円。50人
 果樹実習コース…4月〜来年3月に全8回。紀の川市桃山町の桃畑ほか。桃の摘果、袋がけ、苗植え付けなどを実習。1万2000円。20人。

 希望者は3月23日までに片山さん(0736・77・2956FAX兼)。

(ニュース和歌山/2019年3月2日更新)