無人航空機「ドローン」を災害対応に生かす取り組みが進んでいる。和歌山県は被害状況のいち早い把握のため県内各地への配備を進め、操縦撮影のエキスパート育成に力を入れる。和歌山県警は救命具などを運べ、救援救助に力を発揮する全天候型機を導入予定。警察署には民間企業と提携して訓練を重ね、活用の幅を独自に広げているところもある。

被害調査 救援に力発揮 東署は民間と提携し備え

 県は2015年、田辺市での土砂崩れの際にドローンを初導入した。足を踏み入れられない現場を空撮し、測量するためで、その後も振興局建設部などに配備し、来年度には14機に及ぶ。

 昨年は台風21号や橋脚が傾いた橋本市の恋野橋の調査でも活用。県検査・技術支援課は「本宮町での山崩れでは昼に撮影し、夕方にはデータ解析を終え図面化し、画期的に早くなった。様々な角度、近接でも撮影でき、調査も柔軟にできる」。

 県が取り組むのがドローンを扱うエキスパート職員育成だ。昨年度は300人に初歩的な研修を行い、今年度は20人が航空法を学び、現場で使えるまで操作技術を磨いた。新年度も続け、国土交通大臣の承認が必要となる、目で機体を確認できない状況での離着陸・空撮ができるレベルを目標にする。職員の一人は「船で回り込んで撮影せねばならない所へ近づけ、大きく省力化になるのを実感します」と話す。

 県警は情報収集に加え、救援救助面での活用を目指す。16年の熊本地震での道路寸断、孤立集落の発生を踏まえ、翌年に機動隊と串本署に各1機を配備した。既に台風21号などで活用し、県警警備課は「現場に入る前に被害が分かり、救援に動く前に調整が効く。救助を求める人の有無がすぐ分かるのが大きい」。

 ドローンの弱点のひとつは風雨に弱い点。そのため新年度に全天候対応型の機種1台を購入する。強風でも飛行できるタイプで、物資を運べるリフトアップ機能を備え、救助に生かす考えだ。

 警察各署への配備も進み、和歌山東警察署は民間企業のマシンプラン(和歌山市)と協定を締結した。同社はバッテリーではなく、エンジン搭載で長時間飛べるドローンも製造し、テレビ局の空撮に協力する高い技術力と技能を誇る。東署から要請があれば、これらを動員する。

 これまで合同訓練は5回を数え、倒壊家屋からの救出、中洲へ取り残された人への救命道具の輸送、照明を使い夜間に救援隊を現場へ誘導するなど形を変えた。東署警備課は「思っていた以上に多様な使い方がある。活用の選択肢を増やしたい」。同社の山本博一社長は「撮影の技術が高く、ドローンは間違いなく災害に役に立つ。ただGPSが切れた時など危険性も知っておくべきで、安全に操縦できる人の育成は欠かせない」と強調している。

写真=和歌山東署は民間企業と提携し訓練を重ねる

(ニュース和歌山/2019年3月9日更新)