国際海洋リゾート基地・和歌山マリーナシティを会場に、7月16日に開幕する「世界リゾート博」。72日間にわたって繰り広げられる体験型の博覧会は、人と自然がひとつになれる〝リゾート〟ならではの魅力がいっぱい。多彩な個性派パビリオンでユニーク&感動体験、マリンスポーツ体験や世界の味にふれてみたり、国際色豊かなイベント、エンターテイメントも楽しみだ。     (1994年7月7日号より)

目標の2倍近い約300万人が詰めかけた(和歌山県提供)

 メーンテーマは「21世紀のリゾート体験」。人工島まるごとを会場としたビッグイベント「世界リゾート博」は、多彩なパビリオンや充実した夜間イベント、海に囲まれたロケーションなどが受け、県内外からの客でにぎわいを見せた。猛暑と言われた夏、最終的には当初目標の150万人を大きく超える298万人が詰めかけた。

21組がサモア式結婚式

 「世界リゾート博、ごゆっくりお楽しみください。それではレディー・ゴー!」。7月16日、ゲート前を埋め尽くす入場客を前に、海南市の舩橋泉さん(45)は約130人いた協会コンパニオンの中から、初日のMCを任された。「あの時に話した1分間ほどの内容は20年経った今も覚えていますね」。72日間の暑い夏が幕を開けた。
 主催は県や和歌山市、海南市などで構成する世界リゾート博協会。会場には約30のパビリオンが並んだ。3Dはじめ、当時の最新技術を駆使した映像のほか、人工雪で造ったゲレンデ、県内5つの温泉を楽しめる「紀の国温泉館」と多種多様な内容で出迎えた。

世界リゾート博協会発行『世界リゾート博公式記録』より
21組がサモア式結婚式

 異色だったのは「南太平洋ビレッジ(西サモア)」。ラグーン(砂洲などで外海と遮断されてできた湖沼)の周りに伝統的な円形の家屋が並び、現地から招いた40人が生活する様子をそのまま披露した。「牧師や警官も現地の方で、砂浜の砂や建物の材料を現地から取り寄せるなど、本物にこだわりました」と担当だった鈴木利典さん(53)。火起こしやカヌー体験で来場者とふれあったほか、会期中に21組が現地式の結婚式を挙げた。夕暮れ以降に行うファイヤーダンス(写真右)も好評で、鈴木さんは「ショーの前に場所取りする人が日に日に増えたのを覚えています」。

夜間イベントで夕涼み

 来場者は順調に伸び、目標としていた150万人は8月30日に達成。9月に入っても勢いは止まらなかった。リ博協会事務所の壁には毎日の来場者数をグラフにして貼っていたが、協会事務局長だった若林弘澄さん(81)は「壁では間に合わず、天井まで紙を伸ばした日も何日かありました」。9月10日には期間中最多となる9万6666人が押し寄せた。
 来場者の24%は午後4時以降の入場者だった。夜に実施した花火や海上エレクトリカルパレードなどが人気を呼んだ。若林さんは「あの夏は暑さが厳しかったが、夕涼みにちょうど良かった。台風に見舞われることなく、強い雨も記憶している限り1回で天候に恵まれました」。
 途中、会期延長論も聞かれるほど惜しまれる中、最終9月25日、閉会式を迎えた。ペンライトを振るコンパニオンたちの目には涙があふれていた。
 最後となる298万1199人目の客を見送った後、若林さんは会場内のベンチにおもむろに横になった。夜空を眺めていると涙が流れた。「大きな事故なく終えられた。それが現場責任者として何よりでした」。あの大イベントから20年。「和歌山をPRできたし、もてなしの心で果たせた。リゾート博が99年の南紀熊野体験博、あるいは世界に向けて発信するという意味で、熊野古道の世界遺産登録にもつながっていったのではないでしょうか」。熱い夏の記憶は今も鮮明だ。

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ニュース和歌山2014年8月2日号掲載