20140827miryokuhatanaka

  地元産の新鮮食材にこだわる和歌山市和歌浦西の「和彩あきら」。元々、近海で獲れた魚を中心に扱う飲食店だったが、4月に弁当と総菜の販売店として再出発した。オーナーの畑中章さん(46)は魚介類だけでなく、野菜も農家から直接仕入れるほど鮮度に気を配り、地元食材の良さを発信する。手間をかけて作る料理人魂と弁当に詰める思いを尋ねた。(文中敬称略)

脱サラし料理人へ

──弁当と総菜の店を始める前は、新鮮な魚が人気の飲食店でした。

畑中 祖父が加太の漁師で、小さいころから漁船で釣りに連れて行ってもらうことが多かった。今でも時間ができると沖へ釣りに出かけます。地元産の食材、とりわけ魚を厳選し、調理場に立ってきました。

──料理人の道を選んだのは。

畑中 大学で経営学を専攻し、就職は企業の事務でした。しかし、自分のやりたいことと違うと、27歳で脱サラ。和歌浦に地元の海鮮を専門に扱う店を構えました。料理人を選んだのは、学生時代から趣味の山登りで全国を訪ね歩き、それぞれの土地の料理を味わってきた中で、「和歌山でも記憶に残る逸品を作りたい」と思っていたからです。

丼コンテスト1位

──新鮮な地元産の魚にこだわります。

畑中 漁船が帰港する時間に合わせて加太、雑賀崎、田ノ浦漁港へ買い付けに行きます。市場経由では時間が経つために鮮度が落ちてしまう。生きた状態の魚を漁師から直接買って、店のいけすで泳がせ、活きの良い魚を提供してきました。新鮮な魚は切った身の断面が虹色に輝き、食感もぷりぷりで弾力があります。

──食材選び以外で配慮していることは。

畑中 できるだけ素材の味を生かすため調味料は少なくします。鮮度があれば素材の味だけで十分満足してもらえる。新鮮な魚を口にして、魚嫌いだった子どもが食べられるようになり、県外から毎月ここでしか食べられない味を求めて通ってくれるお客さんもいました。本物の味を知ってもらえるとうれしいです。

──2009年に「たちうお香梅揚げ丼」が和歌山の丼ナンバーワンに輝きました。

畑中 和歌山青年会議所が開いたイベントで、グランプリに選ばれました。地元の名産で、甘味が少ないけれどシンプルな味の太刀魚の特性を生かし、食感を保ちつつ味をアピールできる方法を考えました。梅の酸味で太刀魚の味を引き立たせてうま味を出し、ふわふわな白身はシソの葉を挟んで天ぷらにすることでサクサクの食感を生み出しました。

自慢の味を家庭で

──春に弁当と総菜のみにしたんですね。

畑中 地元産の野菜をふんだんに使い、栄養バランスの良い弁当を食べてもらおうと始めました。弁当には魚や野菜はもちろん、肉も入ります。日々メニューを変え、毎日食べても飽きないように工夫しています。自分の家族に弁当を作るつもりで、安心安全に気を配り、素材にこだわっています。特に健康志向のお客さんに喜んでもらっています。

──野菜の鮮度にもこだわりを?

畑中 はい。市内なら水軒や布引、市外だと海南や紀の川市の農家から直接買って、足りない分は市場へ買いに行きます。冷めても味が落ちない料理は難しいですが、全て手作りで添加物を一切加えない自慢の弁当です。たちうお香梅揚げ丼やあなご天ぷら弁当、予約で刺身の盛り合わせや活魚ちり鍋セットなどを販売し、家庭で味わってもらうことができます。

──目標は。

畑中 海産物の丼で名物が作れたので、今度は野菜で地元の名物をめざします。故郷の旬の味が堪能でき、和歌山と和食を彩る料理を届けたい。

データ
【和彩あきら】和歌山市和歌浦西1―8―7。電話(073・444・0487)。店売りは午前10時〜午後2時で、配達は6時まで。月曜定休。

(ニュース和歌山2014年8月27日号掲載)