◆リハビリテーション科

今村病院 言語聴覚士 濵口 佳菜先生

 

Q.  70歳の父親のことで相談します。脳梗塞後、口からものを食べることができなくなり、胃に穴を開けて、そこから流動食を入れて栄養を取っています。ところが先日、高熱が出て診察を受けたところ、誤嚥性肺炎と言われました。口から食べていないのに、どうしてでしょうか。

A.  胃に穴を開けて栄養を取っていると言うことは、「胃ろう」をされているのですね。
 胃ろうは、口から食事がとれない方や、食べてもむせ込んで肺炎を起こしやすい方に、内視鏡を使っておなかに小さな口を造る手術(経皮内視鏡的胃ろう造設術)を行い、その口にチューブを通して、直接胃に栄養を入れる栄養投与の方法です。欧米で多く用いられている長期栄養管理法で、鼻からのチューブに比べ、患者様の苦痛や介護者の負担が少なく、のどにチューブがないため、口から食べるリハビリや言語訓練が行いやすいというメリットがあります。

異物に含まれる細菌が肺で増殖

 誤嚥(ごえん)とは、口の中や胃の中のものが誤って気管に入ることです。
 通常、口から入ったもののうち食べ物や飲み物は食道へ、空気は気管へと、上手に振り分けられます。しかし、食道と気管は隣り合っているため、時には誤って、食道へ送られるべきものが気管に入ってしまうことがあります。また、寝ている間に、唾液や胃液が少しずつ気管の方へ流れ込むこともあります。その異物に含まれる細菌が肺の中で増殖し、肺炎を起こすことがあります。これを「誤嚥性肺炎」と呼びます。

 誤嚥性肺炎が発症する最も重大なリスク因子は、「誤嚥性肺炎の既往歴」です。つまり、一度誤嚥性肺炎になると、再発しやすい傾向にあります。

 健康な人でも夜間などに、のどの咽頭粘液などを誤嚥していますが、気道の粘膜が繊毛運動で上手に外へ排泄しています。ところが、一度誤嚥性肺炎になると、気道や肺胞が傷ついて、抵抗力がなくなり、誤嚥したものを排泄しにくくなるのです。

 以上のことからご質問者のお父様は、口から食事はされていませんが、唾液などを誤嚥し、その唾液に細菌が含まれていたと考えられます。

要介護者は口腔ケアが重要

 口から食事がとれないなど、介護を必要とする高齢者の誤嚥性肺炎を予防するには、口腔ケアが重要です。お口の中は適度な湿度や温度が保たれており、歯磨きやうがいを怠るとすぐに細菌が繁殖してしまいます。口から食べていないからといって口腔ケアをおろそかにするのではなく、丁寧にしっかりと行い、口腔内を清潔に保つようにしましょう。 

 その際、注意すべき点がありますので、まず、言語聴覚士のいる病院や、歯科などで受診されることをお勧めします。
(ニュース和歌山2015年3月28日号掲載)