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 ご飯を高菜の漬け物で巻いたシンプルなめはり寿司は、古くから熊野地方で山仕事の弁当に食され、郷土料理として今に伝わる。この熊野名物を多くの人に味わってもらおうと、新宮市の老舗専門店「総本家めはりや」が昨年、JR和歌山駅東口近くにオープンした。3兄弟でのれんを守り、和歌山店の店長を務める村尾雄大さん(31)に、素朴な味わいが長く愛される理由や、これから目指す姿を聞いた。         (文中敬称略)

新宮の老舗店

――新宮市で半世紀に渡り営業するめはり寿司の専門店。地元以外にもファンが多いです。
村尾 創業は1962年。新宮市の家庭料理だっためはり寿司を、祖父が商品として出したのが始まりです。和歌山市ではこれまで近鉄百貨店の物産展で買い求めていただき、いつも行列ができていました。昨年5月、新宮市以外で初めて店を構えました。持ち帰り専門と誤解されるのですが、店内でゆっくり食事してもらえます。

――家業ののれんを守っているんですね。

村尾 本店と和歌山店を3兄弟で支えています。小さいころからおやつのように食べて育ちましたよ。高校卒業後、東心斎橋の割烹(かっぽう)で6年間修業し、帰郷しました。

――めはり寿司の由来を教えてください。

村尾 色々あるのですが、昔はソフトボールほどの大きさで、食べる時に大きく目も口も開けることからこの名がついたと言われます。あるいは目を見張るほどおいしいというのや、源平の合戦で、新宮を拠点にしていた熊野水軍の見張り役が片手で食べ、「見張り寿司」が転じたという説もあります。使っている物は米、しょうゆ、漬け物とシンプルで、初めて食べてもどこか懐かしい味のはず。梅やかつおを入れるなど、家庭でそれぞれの味がある。カレーライスのようなものです。

――食べるのに苦労しそうです。

村尾 1合で4個握っているので、そんなに大きくありません(笑)。手で気軽に食べてもらいたいと、店ではハンバーガーに使うような包みを用意しています。これが女性に喜ばれます。

単純だからこそ

――こだわりは。

村尾 作り置きせず、注文が入ってからその場であたたかいご飯をふんわりと握ります。塩漬けした青い葉の高菜に俵状のご飯をのせ、さっと秘伝のしょうゆダレをくぐらせる。しょうゆは勝浦産、高菜は新宮産です。ご飯が硬くなるのや、酸味が出てすっぱくなるのを防ぐため、12時間以内に食べてもらうようにしています。

――めはりやの特徴は。

村尾 品種改良で太くなった高菜の茎を刻んでご飯の中に入れています。これは初代のころから。高菜は硬すぎず、ほどよい歯ごたえが大事。葉は薄く破れないよう、さっと5秒でていねいに巻く。季節や温度でも状態が変わります。これまで何万個も握りましたが、単純だからこそごまかしがきかない。

――めはり寿司以外のメニューも豊富です。

村尾 お昼は定食中心、午後4時以降は居酒屋メニューを充実させています。定番の串カツやおでんのほか、太地のくじら、勝浦のマグロなども出し、観光客や出張で訪れた方にも和歌山の味を喜んで頂いています。自宅でめはり寿司が作れるキットも人気ですよ。

県全体に広めたい

――今後は。

村尾 めはりやのものでなくていいので、めはり寿司を熊野地方の郷土食を超え、和歌山県全体の名産として広めていきたいと思っています。県内でも知らない人はまだまだいます。「和歌山の食べ物といえば?」となった時、和歌山ラーメンなどと一緒に名前が挙がるよう、若い人にもどんどん食べてもらいたい。派手さはないですが、昔ながらの味を守る中でスタイルを変えつつ、満足してもらえる店を目指します。そして東京オリンピックまでには東京や大阪に出店したいですね。

【総本家めはりや和歌山店】
和歌山市太田2-14-9
☎073・488・4655
営業時間:11時〜23時 定休日:月曜日

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【読者プレゼント】めはり寿司2個に串カツ、おでん、山芋の造り、豚汁がついた「お試しセット」の食事券を抽選でペア5組にプレゼント。応募方法はニュース和歌山2015年10月28日号紙面参照。締め切りは11月4日(水)です。

(ニュース和歌山2015年10月28日号掲載)