Q. 右下腹部が腫れてきて、脱腸と診断されました。治療の手順は?

fuku

◆消化器外科・一般外科 福外科病院 日本外科学会認定専門医 日本大腸肛門病学会認定専門医 福昭人院長

 

A. 脱腸(そけいヘルニア)は、加齢とともに下腹部から足の付け根(そけい部)の筋肉組織が弱くなり、その部分からお腹を覆う腹膜が袋状に飛び出す病気です。成人の場合、自然治癒することはありません。放置すると腫れが急に硬く痛くなり、臓器の壊死を引き起こすことがあるので、症状が悪くなる前に手術が必要です。
 外科専門医であれば、視診、触診で脱腸の確定診断を下せます。ただ、痛みが強かったり別の病気が疑われる場合、エコーやCT検査をします。手術日が決まったら、引き続き術前検査(血液検査、胸部レントゲン、肺機能検査、心電図)を行います。
 手術当日は朝食を摂らず受診してください。術前に点滴をし、手術となります。術後は1時間ほど安静に過ごし、鎮痛剤を使用しながら歩行、食事の摂取、排尿が可能なら、その日のうちに退院となります。困難であれば、数日の入院もできます。
 手術方法は、近年では、内視鏡を使った「腹腔鏡法」が主流です。従来の、病変部を直接切開する「切開法」より、痛みや合併症が少ないといわれます。切開法あるいは腹腔鏡法の選択は、担当医師と相談の上、決定することも可能です。外科専門医は日本外科学会のホームページで検索できます。

 

Q. 最近、いい糖尿病の薬が出たと聞きました。どんな薬ですか?

◆内科・老年内科 あきさきクリニック 明嵜太一院長
akisakisin 
A. 糖尿病は、血液の中の糖の濃度が高い状態が続く病気です。最近増えてきているのは「2型糖尿病」で、遺伝的体質に加え、過食、運動不足、喫煙、肥満、ストレスなどの生活習慣や加齢が原因で発症するといわれています。放置すると様々な合併症を引き起こし、糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害は「糖尿病の3大合併症」と呼ばれます。
 治療の基本は、医師の指示のもとで行う食事療法と運動療法です。しかし、数カ月取り組んでも血糖値が改善しない場合は、薬物療法となります。
 近年、糖尿病治療薬は飛躍的に進歩しました。なかでも注目は、「SGLT2阻害薬」です。これは、血液から尿の中にあふれた糖を再吸収する「SGLT2」の働きを阻害し、そのまま尿として排泄させる薬で、尿糖値は高くなりますが、その分、血糖値を下げる効果があります。単剤では低血糖の危険性は低く、体重減少や血圧降下作用がある一方で、「カロリーが尿に出るなら食べても大丈夫」と勘違いし、食事療法を併用しなければ効果が半減します。
 患者さんに適した薬剤は、身体的特徴や生活様式、認知機能などによって一人ひとり異なります。医師の指導を受けながら治療に取り組みましょう。

 

Q. 足の血管のコブと、寝ているときの「こむら返り」に悩んでいます。

外科 楽クリニック 藤田定則院長
raku
A. 下肢静脈瘤のようですね。下肢静脈瘤は、足の血管のコブ、こむら返り、足のだるさ、むくみ、色素沈着(しみ)、かゆみ、発赤、皮膚が硬くなるなどが代表的な症状で、中でも、こむら返りは非常によくみられます。
 下肢静脈瘤は、静脈内の血管の弁が壊れたことが原因で発症します。足で使われた血液がうまく心臓へ戻れず、血液の流れが悪くなるため、夜間に突然足の筋肉が異常に収縮し、こむら返りが起こります。
 下肢静脈瘤が原因のこむら返りが起こる頻度には個人差があり、「月に数回」という方から「毎日」という方までおられます。頻繁に起こる方には、根本的な治療として手術を勧めています。以前は入院が必要だった手術も、現在は外来の日帰り手術が可能となり、体への負担も軽くなりました。
 たまに起こる程度であれば、ふくらはぎを圧迫する医療用弾性ストッキングの着用や、就寝前の十分な足のストレッチなどが有効です。また、こむら返りが起こったときには漢方薬(芍薬甘草湯)の服用が良いと思われます。
 ただし、下肢静脈瘤が原因でない場合もあります。頻回にこむら返りが起こる方は、一度、医療機関を受診されてはいかがでしょうか。

 

Q. かすみ目で受診したら白内障といわれ、手術を勧められました。

眼科 吉村眼科 吉村利規院長
yosimura
A. 高齢になると、個人差はありますが、ほとんどの人に白内障が認められます。
 白内障は、眼のレンズに当たる水晶体が白く濁る病気です。周辺から濁りが生じ、徐々に中心部まで及んでくると、視力の低下だけでなく、視界がかすんだり光をまぶしく感じます。
 白内障の手術を実施している施設では、初期でも手術を勧めることがあります。メガネをきちんと矯正しても、必要な見え具合が得られなければ、手術を受けた方がよいでしょう。近年は、機器の進歩により、外来での日帰り手術も比較的安全に行えるようになりました。
 手術は、濁った水晶体を超音波で砕いて取り出し、代わりに眼内レンズを挿入します。裸眼視力が回復しますが、なかには「手術直後はよく見えていたのに、また見えにくくなった」と訴える人がいます。これは「後発白内障」というもので、手術のときに残した膜が濁ってくるために起こります。後発白内障は、YAGレーザーで簡単に濁りを取ることができます。しかし、眼底出血等、別の病気が原因の場合もあります。
 手術の設備がない施設でも、病診連携、診診連携により、手術可能な施設を紹介できます。かかりつけの眼科の先生にご相談ください。

(ニュース和歌山2015年12月26日号掲載)