大阪で修業中、和歌山産食材の素晴らしさに目を見はり、「和歌山の人に和歌山の食を」とこだわる居酒屋、紀州蔵の村畑圭悟店主(36)。食材は主に信頼を寄せる県内の生産者から買い付けるが、時には自ら串本の市場でセリに参加し、たけのこ掘りやハチミツしぼりに出向く。地元の味に目を向ける姿勢を、常に保つ。

食材吟味しメニュー

 2016070601_miryoku食材を仕入れ、その日のメニュー作りを始める。コンセプトは「お皿のどこかに和歌山を」。串本や加太、雑賀崎から魚、有田から肉。野菜、塩、酢、酒、ジュースも地元産だ。

 「加太の鯛など天然物はもちろん、串本の養殖マグロは赤身と脂身のバランスが絶妙で、有田で平飼いされた鴨は身が引き締まり脂が乗る。こんな食材は和歌山ならでは」

 一つひとつ吟味し、造り、焼き、蒸しなど調理法を考え、メニューに落とし込む。ジャンルにとらわれず、ヒラメやカンパチの造りの後、紀州夏野菜と古座のみそを使ったキッシュ、アワビのあんかけと和洋中混合になることも。

 「どう調理すれば、一番おいしく食べてもらえるかを考えた結果です。メニューには生産者の名前も入れます」

 

 

地元で認められたい

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 20歳で食の道へ。大阪、神戸の広東料理店や居酒屋、海鮮店で腕を磨き、「もっと魚について深めたい」と串本に移る。港のレストランで働き、仲買として魚の仕入れに携わった。2年間勉強した後、大阪で店を開くはずだった。

 「再発見した和歌山の魅力を、大阪の人に味わってほしいと考えていましたが、途中から『せっかくの豊かな食。地元の人に伝え、認めてもらいたい』と変わりました」

 結局5年を串本で過ごし、故郷の和歌山市で店を始めたのが2年前だ。

 「調味料まで和歌山産です。やるなら、やりきる。それでダメなら、あきらめもつく。倒れるとしても前のめりで、と気持ちを入れてます」

 こだわりは波及する。1年前、県産品料理勉強会を立ち上げ、同じ思いを抱く料理人と旬の食材を使った料理を紹介しあう。最近、店を出したい若手に自分たちの店を使ってもらうことで、独立を支援する活動を描き始めた。

 「地元産品を使い、若手が商売を始めれば、和歌山の盛り上げにつながる」

 思いは、熱をおびている。

【わかやまDining 紀州蔵】
和歌山市十二番丁23 U bldg. 十二番丁101。午後5時半〜深夜2時(ラストオーダー:食事0時半、ドリンク1時半)。月曜定休。☎073・496・4427

(ニュース和歌山2016年7月6日号掲載)