地誌書『紀伊続風土記』に「鳴滝、入道滝、比丘尼滝、三重滝、仙人滝。右五滝は皆、色川郷の奥にあり」とあることから、江戸後期には、この名がついていたとわかる。

 なぜ、仙人という名がついたのか。入道、比丘尼、仙人…。入道は、仏道に入って修行した人たち。比丘尼は、おそらく熊野比丘尼で、熊野三山を勧請して諸国を回った女性たち。仙人は、人間界を離れて山中に暮らし、不老不死の術を求め、神通力を得た者を指す。

 これらの名を冠する滝は「那智の滝を中心として、滝それぞれに修行者がいる」という図式である。これこそが熊野本来の姿ではないだろうか。

 滝見道を登ると、突然現れる断崖絶壁。見上げる大滝に、おもわず驚きの声を上げてしまった。

(ニュース和歌山/2017年10月14日更新)

大上敬史さん作製「和歌山県の滝」で、県内の滝が紹介されています。