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響く勇壮なリズム
○●○和太鼓編○●○
      
懸命に学ぶ高垣記者
タジタジしながら懸命に学んだ
 戦国時代、織田信長と戦った雑賀孫一の戦勝太鼓に踊りの要素を加え、現代に復活させた「黒潮・躍虎太鼓」。腹底から響きわたる勇壮なリズムに国内外の定評は高い。最近は保存に取り組む黒潮・躍虎太鼓保存会のメンバーが小学校や幼稚園で太鼓の授業をするなど、親しみやすさを増している。今回の「達人に聞く」は、同会の組頭・宇治田良一さんに手ほどきをうけ、和太鼓の奥深さに触れた。
左右の叩き方一定が基本
 眼前に直径1メートル以上ある巨大な平太鼓。「まず叩いてみな」の言葉に、両手にバチを持って遠慮がちに振り下ろす。が、音がおずおずしている。一方、高らかに手を振り下ろす達人の一打一打はびしりと気合いがこもっている。
 「足を広げて、腰を落ち着け、思い切り叩いて手で反動を受け止める」との指導。気持ちを取り直して思い切り叩く。音は前より響いた。しかし、叩いた後の反動でバチがぶれ、音がビシッと決まらない。おまけに続けて叩いてもリズムが一定にならない。
 「みんなどうしても利き腕の音が強くなる。左右の音を一定にするのが基本中の基本。演奏になると1時間近く続くのだから、狂わないようにしないと」。そう言われ、繰り返しても「ダメダメ」と目をつぶって首をふるばかりの宇治田さん。
 リズムが一定になっているか否かの判断もつかず、タジタジしながら打ち続けた。
単純さゆえの奥深さ実感
 見かねたのか、次に勧めてもらったのが「連打」。腕を振り上げず、手首のスナップだけを効かせて手元でドコドコドコドコと延々と同じ調子で叩き続ける。
 今度こそと落ち着いてやってみるが、リズムがどうしても利き腕に片寄ってしまう。そのうち、ドッコドッコ、ドッコドッコとまるで“阿波踊り”のリズムに…。叩いていて情けなくなった。
 宇治田さんも「そういうリズムもあることはあるのだけれど…」と困惑顔。弱く叩いたり、気持ちを取り直して落ち着いてやったりといろいろ試みるが、太鼓に嫌われている気さえしてくる。
 「太鼓には強弱とリズムの組み合わせしかない。単純ゆえに難しく、奥深いのです」との言葉。しばらく一人で首をかしげながら延々と叩くが、“阿波踊り”風のリズムを克服できなかった。
腕振り抜いて音を抜けさせる
太鼓をたたく宇治田さん
どっしりとした安定感がある
 「なんとか次の展開はありませんか」と多少の成果を求めて言うと、もう一度最初の指導に戻ってくれた。ドン、ドン、ドン、ドンとゆっくり左右に叩く。叩いた後も観客を意識して腕を上げて間をとって打つ。「振り下ろす時に音を抜けさせなあかん」
 そのアドバイスに何故かピンと来た。余り力まずに腕に力を乗せて、太鼓を貫くことをイメージして何度も腕を振り下ろす。「ただ叩いている時の音と、伝える気持ちのこもった音とは全然違う。音に気持ちをのせないと」との言葉を聴きながら、叩く、叩く。
 1時間近く叩いていたので腕が少々笑っていたが、のってくると叩いた腕が自然と上に伸びる。リズムも一定になってくるのがようやくつかめた。音が太鼓の下を貫く感じが腹の底から伝わり、壮快感も。
 「どうですか?」と宇治田さんに尋ねると、「ましになった」との一言。頬がつい緩んだ。
 最後に遅いリズムと速いリズムの組み合わせを習った。打っていると「はい!はい!」と宇治田さんが合いの手を入れてくれる。最初は、乗せてくれるためかと思って頑張っていたが、どうやら筆者に延々と叩かしてやろうとの狙いが。「はい!はい!」と煽るのをやめてくれない。
 腕がガクガクなって、ついにギブアップ。基礎的なリズム感以外に人並み以上の体力のいることを痛感して、バチを置いた。    (高垣善信)
気持ちを音にのせる
宇治田良一さん 【きょうの達人】
宇治田良一さん
  (1950年1月25日生)
和歌山市湊在住。1979年に黒潮・躍虎太鼓を伝承するアロチの芸者から太鼓の叩き方を教わり、伝承活動を開始したのが保存会の始まり。組頭として会を率い、国内外で年間40回以上の公演をこなすかたわら、最近は小学校や幼稚園で太鼓の授業を行っている。
「太鼓は誰でもできる半面、叩けば叩くほど奥の深さが分る楽器です。一番大切なのは気持ちを音にのせること。学校に教えにいっても、やんちゃな子ほどいい音を出す。気持ちを前に出そうとするからです」
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